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〜 2013年3月17日ダイヤ改正における長野県内の動き 〜

社会交通工学科3年 1151番 吉江 和洋




写真1 松本駅で休む211系の並び(2013.7.21)


1. ダイヤ改正の概要

 毎年、様々な列車が登場しては消え行く時期として、鉄道ファンにとっては騒々しい季節とも言える3月中旬。過去にはヨンサントオといった10月のダイヤ改正も大きい改定を行ったこともあるが、近年はこの3月のダイヤ改正に集約してきている。2013年3月のダイヤ改正ではE6系「スーパーこまち」登場と同時に団子鼻の新幹線の引退や、私鉄では東急東横線と東京メトロ副都心線の直通運転開始など、全国で様々な出来事があった。
 近年あまり動きのなかった長野地区であるが、2013年は目まぐるしい変化を見せた。新車投入・運用変更・国鉄型の引退と幅広い動きがあった。今回は、その動きを主観的であるが、簡単にまとめてみようと思う。


2. 長野地区における車両の動き

 まず、今回の車両の動きを以下の図に示す。211系の導入という大きな動きがあり、それに伴い様々な変更が見られた。



図1 2013年3月における動きの略図


2-1. 211系の転属

 今回長野地区にやってきたのは、房総地区で活躍していた211系である。これは元々JR東北・高崎線上野口用に導入された5両編成で、3編成つなげて最大15両編成を組んで近郊区間のラッシュに重宝されてきた。しかし、E231系の導入や東北・高崎線系統の全列車にグリーン車連結等の動きがあり、一部の余剰になった211系は現・幕張車両センターに転属、房総地区に残っていた113系初期車を一部置き換えた。その房総地区では、元京浜東北線の209系に全編成が置き換えられ、2013年3月で房総地区の211系も撤退となった。



写真2(左) 房総地区で現役時代の211系マリ502編成(2011.8.30 物井〜佐倉間にて)
写真3(右) 長野への配給輸送の様子(2013.1.10 蘇我にて)

 長野地区では3両編成が基準のため、211系5両編成のうちサハ2両を廃車した2M1Tとし、帯を水色と薄い緑色の「長野色」として登場した。車内はロングシートのままとしており、ラッシュ対策となっている。パンタグラフはシングルアーム型に変更され、2基積んでいたマリ500台のクモハについては運転台上のパンタグラフが撤去されている。
 幕の変更やATS-Psの搭載等も行われた。また、強化型スカートへの置き換えが始まっており、改造が遅い編成から強化型スカート付きで登場。今後この装備が標準になると思われる。



写真4 大型の強化スカートとなった211系N336+N333編成(2013.8.15 上諏訪にて)

 運用範囲は暫定的なため、定期運用は信越本線・篠ノ井線・中央本線の長野〜富士見間、大糸線の松本〜信濃大町間に限定されている。なお、土曜休日は増結の意味合いでE127系2両の運用に入り、大糸線の南小谷まで入線する。


2-2. 115系・E127系の運行形態の変化

 211系が導入され、115系の運用を置き換えると予想していたファンも多くいたが、実際には大糸線の運用が大半を占めている。これは12本しかないE127系を捻出するためである。この改正に合わせて篠ノ井線・信越本線の松本〜長野間でワンマン運転が開始され、中央本線の旧ルートである塩尻〜辰野間の123系置き換え以外にもE127系を使用することになった。このため大糸線でのE127系の運用は少なくなり、朝ラッシュ時に運転されていた2両編成3本を連結した6両編成の運用も211系3+3両編成に置き換えられた。これ以外にE127系は茅野まで入線するようになり、定期運用範囲は過去最大となった。



写真5(左) ダイヤ改正で引退した123系「ミニエコー」(2013.2.10 小野〜塩尻間にて)
写真6(右) 長野から茅野まで入線するようなったE127系(2013.6.23 松本にて)

 これまで篠ノ井線・中央本線系統の普通列車の全列車が115系によって運転されてきたが、今回ついに変化が現れた。211系が大糸線、E127系が昼間の篠ノ井線松本〜長野間の運用に入り、115系が捻出された。このうち、2両編成の115系N50台の7編成は全車廃車となった(後述)。3両編成のN編成は、信越本線長野〜直江津間で189系によって運転されていた普通「妙高号」を一部置換え、3+3の6両編成の運用も増えた。また、N編成はJR東海への乗り入れの関係で編成札が緑色とピンク色に分かれているが、ピンク色の一部の編成および緑色の乗り入れ可能な編成と、そうでない編成で運用を完全に分割。乗り入れ不可能な編成は信越本線・しなの鉄道乗り入れ系統のみの運用となっている。これでも余剰があるため、編成不足となっていた新潟地区にN27編成が転属、現在は新潟車両センターN33編成となって、2013年8月頃から定期運用に入るようなった。



写真7(左) 運用が減った189系「妙高」、今後が注目される。(2011.3.30 長野〜北長野間にて)
写真8(右) 新潟地区の一員となった長野色115系。(2013.9.2 亀田にて)


2-3. 313系の運行について

 2007年3月のダイヤ改正より「みすず号」として飯田線から岡谷経由で長野を結んでいた313系1700番台神領車だが、この改正で松本までの乗り入れに縮小された。しかし、ダイヤはこれまでとほぼ変わらず、長野〜松本間がE127系による運転に変わっただけと言える。加えて、松本駅では乗換が新たに発生し、しかもホームが違うので短時間での階段・エスカレーターを使った乗換が発生している。一方、松本止まりとなった313系は改正前の折り返し列車が松本に戻ってくるまで松本の車庫で留置となり、車両運用の効率は悪い。この運用は変えなくても良かったのではと筆者は考える。また、その折り返し松本始発天竜峡行となった「快速みすず」の通過駅はみどり湖のみで、さらに後続の普通列車と岡谷で接続するなど、名ばかりの快速となってしまった。



写真9 通過駅が1駅になってしまった「快速みすず」(2010.8.15 松本にて)


2-4. しなの鉄道での変化

 JRに合わせて大きく変わったのが、第3セクターのしなの鉄道である。1997年10月の開業以来、JR東日本から譲り受けた169系を走らせてきた。2008年よりS52編成は国鉄色(湘南色)となり、各種リバイバル運転を行うなど根強い人気があったが、2013年3月で残念ながら引退となった。代わりに導入されたのが、廃車となった115系N50台の2両編成である。ワンマン化改造され、昼間のワンマン運転の他、既存の115系3両編成と連結して5両編成となってラッシュ時は活躍する。その代わり、115系による3+3両の6両編成での運用もなくなった。さらに、唯一未更新であった115系S5編成も合わせて廃車となった。執筆の時点では転入した編成は長野色のままだが、しなの鉄道の塗装になるか気になるところである。なお、S52編成は坂城駅で保存されている。



写真10(左) リバイバル運転された169系(2013.3.24 屋代〜千曲間にて)
写真11(右) しなの鉄道所属となって増結運用に入る2両編成(2013.8.19 戸倉にて)


3. 2013年諏訪湖花火大会による運用

 毎年8月15日には、長野県諏訪市において諏訪湖上花火大会が開催され、何十万人と訪れる全国的にも知名度の高い花火大会である。この花火大会の観客輸送のため、沿線の区間では通常の3〜6倍の列車増発を行い対応している。3両編成や2両編成の115系は全て6両編成に増結、6両固定編成のC編成も予備車を最大限に活用、といったように長野支社管内の車両を総動員するが、これでも車両不足のため1990年代後半より豊田電車区(現豊田車両センター)から201系を借り受け、本場さながらのラッシュに本領を発揮していた。これは現在もE233系に受け継がれている。
 2013年も例年通りにE233系の活躍が見られたが、ロングシートである211系がこの花火客輸送に大きな効果をもたらすため、非常に楽しみであった。3月からの211系の運用は暫定的なもので、211系は改造終了次第続々と出場したが、運用は増えなかったため余剰という形で活躍は見送られていた。このため、花火大会での運用が長野転属後初めてであった編成も多くあった。
 ということで、2013年の花火大会臨は115系、211系、E233系とバラエティに富んでいたが、過去最高の1時間雨量を観測するなど、諏訪地区に記録的な集中豪雨が直撃。開始30分で花火大会史上初の中止となり、中央本線は2度の雨量規制と線路点検の影響で、最大7時間弱の遅れ、およそ数十万人に影響が出た。ダイヤは大幅に乱れ、運休・行先変更も相次ぎ、帰宅難民が発生した(筆者もその一人)。松本発千葉行きの「あずさ30号」は、定刻ならば20時台に千葉駅到着だが、この日は翌日早朝にようやく千葉までたどり着いたようで、夜行列車そのものであった。



写真12(左) 全て「臨時」幕の115系が集った。この後抑止となった(2013.8.15 上諏訪にて)
写真13(右) 花火と雷雨の中で並んだ211系とE233系。(2013.8.15 上諏訪にて)


4. 長野地区の今後

 211系の登場により大きな変化が起きた長野地区。E127系導入・169系引退以来の大規模な車両転配となった。しかし、房総地区の211系では115系全編成を置き換えることはできないので、今後さらに211系の改造が進むのか、新潟地区のE129系のように新車が登場するのか、楽しみなところである。一方、中央本線系統の特急「あずさ」・「かいじ」系列への新車導入や、大宮総合車両センター所属の183系OM103編成の長野転属(N104編成)など、特急型車両の動きも大きい。北陸新幹線開業に向けてさらに動きがあると思われる。「地元」という観点から『貴重な日常』を記録していければ幸いである。


参考文献
  • DJ 鉄道ダイヤ情報2013年5月号 pp.8, 14, 24-27
  • DJ 鉄道ダイヤ情報2012年10月号 pp.22-33, 42-47
  • JR東日本長野支社「2013年ダイヤ改正について」、http://www.jreast.co.jp/nagano/pdf/121221.pdf、2013年10月参照



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