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社会交通工学科3年 1071番 鈴木 航 |
1. ダイヤ改正概要 2013年3月、東京メトロ副都心線と東急東横線が直通運転を開始するにあたってダイヤ改正が行われた。その際に東京メトロ副都心線に直通、または接続する東京メトロ有楽町線、東武東上線、越生線と、西武池袋線、西武有楽町線、豊島線、秩父線などの多摩川線以外の西武全線、東急目黒線、みなとみらい線で同時にダイヤ改正が行われた。また、実際にはあまり使われていないが、「東武東上線・西武池袋線・東京メトロ副都心線・東急東横線・みなとみらい線」の5路線をまとめて「チームFライン」と呼ぶ。 写真1 チームFライン名称決定記念ストラップ 2. ダイヤ予想 ダイヤ改正が行われる半年ほど前から、改正後のダイヤを予想していた。予想が実際と合っていたかは後々触れていく。朝ラッシュ時間帯などは各社の事情により大きく変わるので、ダイヤの予想は日中のパターンのみとする。筆者は東武東上線沿線に住んでいることもあり、東上線を重点的に予想していく。まず、ダイヤは最も本数が多くなる東急東横線から予想する。また、みなとみらい線は東急東横線と一体的なダイヤとなるので、同時に予想する。 2-1. 東急東横線・みなとみらい線 2-1-1. 制約条件 (1) 元々8両編成しか存在しない路線だったため、東急車は直通用に新造した10両編成(5050系4000番台)以外に10両編成の車両は存在しない。 (2) 急行停車駅のみ10両停車対応工事を行うため、10両編成で各停はできない。 (3) 10両編成で菊名駅の引き上げ線には入れない。 2-1-2. プレリリース 東急電鉄HPなどで事前にダイヤの情報が発表されていた。そちらの情報も予想をする上での制約条件として扱う。 (1) 特急、通勤特急は10両編成で運行する。 (2) 原則として副都心線との種別変化は以下の通りとする 東急線 ― 副都心線 特急 ― 急行 通勤特急 ― 急行・通勤急行 急行 ― 急行・通勤急行・各停 各停 ― 各停 (3) 渋谷―元町・中華街について改正前は毎時16本の運行だったが、日比谷線直通(毎時2本)廃止に伴い、その分は渋谷方面―菊名の運行とする。よって、渋谷―菊名は毎時18本の運行となる。 (4) 東横線内の主要駅のダイヤ改正後の時刻は発表済みである。 2-1-3. ダイヤ予想 東急東横線ではかなり昔のダイヤから渋谷視点で、特急→各停→急行→各停の15分サイクル×4で1時間のパターンが構成されており、優等列車は自由が丘と菊名で各停と接続するダイヤであった。今回の改正はこれに30分に1本、菊名行きの各停を足すことになる。渋谷―元町・中華街において、追い越し可能な駅は自由が丘、元住吉、菊名のみであり、先述のパターンでは自由が丘と菊名で毎回追い越しが行われているので、新たに追加する各停は元住吉待避となるのは確実である。また、東急線特急―副都心線急行の組合せの列車は東急車両、東京メトロ車両、西武車両、東武車両の4種が入り乱れて乗り入れることが予想されるので、西武方面から来た車両は西武方面へ、東武方面から来た車両は東武方面へ返すことがベターである。東急線内特急の列車が東武線は川越市へ、西武線は飯能へ向かい、特急は毎時4本なので、30分ずつ特急川越市行きと特急飯能行きができると予想する。改正前では急行は特急に、特急は急行に折り返していたが、上下で10分パターンをずらすことで、特急は特急に、急行は急行に折り返すことが可能になり、上記の条件と特急が10両編成である制約をクリアする。これらを基にスジを引いていく。チームFラインでは横浜では上りだった列車が、和光市では下りになっていたりするので、横浜方面、和光市方面と表記する。 図1 東急東横線 和光市方面時刻表 図2 東急東横線 和光市方面ダイヤグラム 図3 東急東横線 横浜方面時刻表 図4 東急東横線 横浜方面ダイヤグラム ここまでは下準備である。東横線はこれ以外のパターンが思いつかないので、ほぼ確定して次に東武東上線へ移る。 2-2. 東武東上線 2-2-1. 制約条件 東武東上線は車両の性能・構造の都合上、ダイヤに制約が生じる。 (1) 東京メトロ副都心線、有楽町線へは地下鉄直通対応車である9000系、9050系、50070系のみが乗り入れ、それ以外の車両は乗り入れない。逆に、これらの車両が東上線のみを走る地上運用に入ることは可能である。 (2) 直通運転中止時のダイヤ大幅乱れを防ぐため、また車両制約の都合上、地下運用が地上運用に折り返さない。(例:新木場発 普通川越市行き → 準急 (東武)池袋行き にはならない) (3) 8両編成は柳瀬川以北へ入らない。 2-2-2. プレリリース(1)「快速」 東武鉄道のHPでは、新種別「快速」が誕生する旨が発表されていた。停車駅は池袋、成増、和光市、朝霞台、志木、ふじみ野、川越、川越市、若葉 、坂戸、東松山〜小川町各駅となっている。やはり「東武の快速は急行より速い」。そんな会社は東武か昔の京成ぐらいであるそうだ。よく見ると、川越市以南は急行と同じであり、川越市以北は快速急行に若葉を足したものである。東武は「快速急行に成増、朝霞台、ふじみ野、若葉を足した新種別。」と謳っているが、利用者から見れば「急行から霞ヶ関、鶴ヶ島、北坂戸、高坂が減った種別。川越市以南は同じ。」と思っている。ここで、疑問が浮かぶ。それは快速と急行の緩急接続(もしくは追い越し)である。何度も言うが、川越市以南は急行と同じである。とりあえずスジをひいてみると以下の図のようになった。 図5 東上線快速案 ここで問題なのは川越市駅である。この駅は2面4線で引き上げ線が2本あり、下り本線からも副本線からも引き上げ線へ行けるが、基本的には川越市止まりの列車は副本線に到着し、引き上げ線へと向かう。この案だと最初に川越市に到着する急行が副本線へ。後からふじみ野で抜かれた川越市行きが本線へ、その後引き上げ。さらに後から快速が空いた本線へ到着し、発車。抜かれた急行が副本線から発車し、すぐに川越市止まりの普通が副本線に到着するという流れになる。急行から見ると抜かした準急に再び抜かれるような図になる。少し現実的ではないので、他の案を考えてみる。 急行と快速の差が出るのは川越市〜東松山の区間である。この区間で追い越し可能な施設があるのは高坂のみである。しかし、高坂は貨物列車の取り扱いがあった歴史があり、停車するホーム側が本線、追い越す側が副線という扱いであり、副線側に35km/hの速度制限がかかっている。ここで追い越しをしたのは森林公園検修区でイベントが行われた際に運行された2本の臨時列車(川越市発の8000系(8111F)が池袋発の50090系を追い越した)の運行時のサービスのみで、基本的に追い越しは行われない。以上の経緯より、川越市〜東松山の区間での急行と快速の追い越しは行われないと考える。 ここまで考えると、「実は急行は抜かれないのでは?」という案が頭に浮かぶ。ちょうど、このころ、東武鉄道から新たな情報が発表された。 2-2-3. プレリリース(2) ・新種別「快速」設定 停車駅:池袋、成増、和光市、朝霞台、志木、ふじみ野、川越、川越市、若葉、坂戸、東松山〜小川町の各駅 ・30分での基本サイクルダイヤ化 急行が1本、森林公園行きと小川町行きが変わる以外は30分サイクルダイヤ、大きく見て60分サイクルへ。 現行は60分サイクルダイヤであったが、よりわかりやすく、他社線などで運転支障が発生した場合でもダイヤ修正がしやすくなる。 ・TJライナーが全て小川町行きに 50090系の編成が増えたことで運用に余裕があるのか、フランサ(つきのわ)を推したいのか、 小川町へのODが多いのかは分からないが、森林公園行きのライナーはなくなる 。 ・快速急行が朝を中心に増発 上りの快速急行が朝に平日、土休日それぞれ小川町発で新設定される。 川越、池袋、渋谷、横浜方面へ出かけやすくなる。 (帰りは全部小川町行きになったTJライナーでということなのでしょうか?) また、TJライナーが小川町に行った分、その返しとなる快速急行が少し増える。 ・日中の池袋の発車時刻を発表 日中のダイヤ予想で関係があるのは快速と、30分サイクルと池袋の時刻である。 2-2-4. ダイヤ予想 図6 東上線下り案 まずは下り。備考欄の駅名は待避駅である。池袋を毎時25分、55分に発車する急行が森林公園行きであるので、後の快速は川越市まで5分差を保ったまま走行し、急行は森林公園まで逃げ切るということになった。地下直通は副都心線からの列車に関しては東急線内の時刻が発表されているので、これでほぼ確定である。有楽町線は和光市〜志木の区間でダイヤに開きがあるところに差し込む。東上線のダイヤが30分サイクルなので、地下直通もYとFそれぞれ毎時偶数本の運行になるので、Yは2本でしょう。Fは東横特急の数の半分(もう半分は西武直通)なのでこちらも2本であると予想する。 次に上り。上りについては時刻のプレリリースはない。ここからは完全に個人の予想である。快速が毎時2本であり、TJライナーも夕方は毎時2本である。これらを上手く利用して、快速は50090系で運用することでそのまま半分は入庫、半分は快速急行で池袋送り込みにすればスムーズにTJライナーに回せるようになり、できればクロスシートで遠距離に速達性と快適性を提供できると考えた。それにより快速は池袋で快速へ折り返せるダイヤを組むことにした。改正前では池袋の発車番線は、1番線が準急、2番線が急行、4番線が普通である(3と5番線は降車専用ホーム)が、改正後は1番線が準急と快速、他は同じであると予想する。これは準急が毎時2本しかないのに対し、急行は毎時4本であり、1番線の方が、圧倒的に余裕があるからである。また、小川町〜嵐山信号場(小川町-武蔵嵐山間)は単線である。これによりこの区間で上下の列車がすれ違うことはない。これとは別に副都心線直通のスジに関しては、東急線内の時刻が確定しており、副都心線内は急行であることも分かっていることから、和光市の発車時刻がおおよそ定まる。また、改正前不評だった前々回改正より大幅に減っていたふじみ野での緩急接続を、改正後では基本的に行うと予想した。これらをもとに上りのダイヤを組む。 図7 東上線上り案 東上線の予想に関してはここまでである。あとは森林公園での間隔調整による停車時間の程度で多少の時刻の前後はするだろう。 2-3. 東京メトロ副都心線、有楽町線 地下鉄線に関しては、直通先のダイヤに左右される。大方は和光市―新木場、元町・中華街の運行となるだろう。有楽町線は6分間隔で、副都心線は東急東横線のダイヤをベースに東急線内急行の列車は副都心線内各停に、特急の列車は急行で運行のダイヤを組む。ダイヤ予想に関しては、先述の東急東横線の項で出した図の通りである。 2-4. 西武池袋線、西武有楽町線 西武線に関しては、筆者が東武沿線住民のため詳しくないが、プレリリースの際に東急線内特急で運転するものは西武線内で快速急行として運転する(日中のみ)の発表があった。これにより東急線沿線のお客さまを西武球場や遊園、飯能、秩父方面へ誘い込もうとする強い意志が感じられる。しかし、東急線のダイヤが発表された際に毎時2本ある東横特急からの西武線快速急行が半分は小手指止まりであることが明かされた。さらに西武池袋線には「ちちぶ号」という有料特急が運行しており、西武球場前直通臨時便などを考えると、サイクルパターンを組むのが難しい。 そもそもダイヤを予想していた時は、改正前と同じく快速が副都心線へ乗り入れる予想であり、快速急行が地下鉄線へ乗り入れるとは思っていなかったので、この時点で予想ダイヤが崩壊した。 3. 結果、考察 予想ダイヤと改正後のダイヤを比較する。 東急線は時刻が公開されているので予想も何もない。副都心線もそれに付帯するのでほぼ同じである。 東武東上線は下りに関してはおおむね予想通りであるが、予想と違う点は、「日中の志木始発終着が無い。」「有楽町線のタイミングか少し異なる。」「池袋発の川越市行き普通は上板橋、成増の他にふじみ野でも待ち合わせがある。」「森林公園-小川町間の運転間隔の調整は行われず、30分間電車が来ない時間が毎時1回存在する。」である。 東武東上線上りは「快速が快速に折り返さないので、それに伴い優等列車が全体的に5〜10分程度後ろへシフト。」「成増毎時0分発の池袋行き普通は待避駅が中板橋ではなく上板橋へ。」「川越市発の池袋行き普通は志木での待避はない。」が予想と異なった。発車順序はほぼ予想通りである。 東急東横線と副都心線の直通ダイヤは副都心線開業前から少しだけ予想はしていたが、当時と直通運転直前では状況がいくつか変わった。
次回のダイヤ改正では
写真2 「試運転」 東急5050系4000番台 東武東上線 坂戸にて 参考文献
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