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〜 京成電鉄シティライナー 〜

土木工学科1年 2195番 中川 凌一


1. シティライナーとは

 シティライナーやスカイライナーに乗車した話をする前に、そもそもシティライナーとは何か?といった人のための説明をする。シティライナーとはAE100形電車のことである、と言われても京成電鉄を利用しているしていないにかかわらずどの車両の事なのかが分からない人も多いだろう。実際私自身もつい最近まで京成の車両の形式をすべて把握していたわけではない。今から1年半ほど前に購入した「週刊歴史でめぐる鉄道全路線大手私鉄No.13京成電鉄(朝日新聞出版)」を読むまでは2代目3000形くらいしか正確に把握していなかったのだ。そんな人でも「スカイライナー」という名前を一度くらいは聞いたことがあるだろう。
 「スカイライナー」は上野と成田空港を結ぶ特急であるが、それこそがAE100形電車の元愛称なのである。ちなみにAEとはエアポート・エクスプレスの略で、空港輸送を意識したものである。「元」愛称というだけあって、現在では「シティライナー」と名前を変えて運行している。それでも「スカイライナー」と聞けばあのトリコロールカラーのAE100形を思い浮かべる人もまだ多いだろうし、中には茶色い初代スカイライナーを思い浮かべる人もいるかもしれない。一応形式も言うと初代AE形で2代目AE形は3代目スカイライナーの事。もちろん形式まで思い浮かべる人はあまりいないだろうが。ちなみに初代AE形は形を変えながらも3400形として走っている。成田空港へ行く際に京成を利用した人は多かれ少なかれ、AE100形への何かしらの思い出を持つ人もいるだろう。スカイライナーを利用した人はこれから海外旅行が始まると心躍らせたり、利用できなかった人や普段からスカイライナーを見ている人は羨ましがったりしたのだろう。私自身もよく最寄り駅を通過するAE100形を見ながらいつも乗ってみたいと思っていた。しかしなかなかその機会はめぐっては来なかった。しかし、ある日突然その機会はめぐってきた。



写真1 AE100形



2. 2代目スカイライナーに乗車

 「定期テストも終わったし、スカイライナーでも乗りに行くか」高校2年の定期テスト最終日、その日は2010年の5月下旬だったと記憶している。帰宅時に友人からそんな誘いを受けた。突然であったため、少々困惑しながらも一緒に行くことにした。さっそく友人と共に京成上野へと行き、ライナー券(特急・指定券)を購入した。「禁煙喫煙どちらですか?」「禁煙でお願いします」当時はまだ喫煙車があったため、窓口の係員とそんな会話をした。改札を通り抜けホームに降り立った。先頭車まで行き、写真撮影。撮影後車内へ入った。
 初めて見るAE100形の車内はすっきりとしていて、新幹線を思わせるようなデザインだった。空港アクセス専用特急らしく、大型のキャリーバックでも置けるほどの荷物置き場がある。しかし、2代目AE形に比べると物足りない。ピーク時の輸送量を重視したのだろうが、実際に満席になることなどほとんどありえない。ピーク時には1時間に2〜3本ほどの運行本数であるし、定員はAE100形が430名。行楽シーズンでも上野もしくは日暮里から成田空港へ行く利用者数が1時間当たり1000人を超えることはほとんどない。だいたい1編成あたり200席ほど空席があるが、時にはほぼ満席となる日もあるそうだ。この時乗車したスカイライナーは1両あたりわずか6人ほど。1編成すべてでも50人を下回る。ただ、これは平日14時ごろであるためだったのだろう。実際よく最寄り駅から見たスカイライナーの車内には多くの利用者の姿を見ることも多かった。どちらが真の姿なのかはわからないが、平均より少ない時間帯だったのかもしれない。
 車内を見渡すと、観光客というよりむしろビジネスマンの姿が多く見受けられた。ノートパソコンを使う人もいた。そうしたビジネスマン向けの設備として、3代目スカイライナーには各座席にコンセントが設けられているが、AE100形には確かなかったと記憶している。しばらくして、スカイライナーは上野駅を出発した。上野・日暮里間のほとんどがトンネル内を走行し、しかも急カーブの連続。普段なら窓を閉め切っていても車内にトンネル内の轟音が響いていたが、AE100形の車内はかなり静かで、快適であった。5分ほどで次の停車駅、日暮里に到着した。
 まだ日暮里駅が1面2線時代の時にできれば乗車したかったが、もうすでに新ホーム(3階)に移行してしまった後であった。以前の日暮里駅とはかなり変貌したものだ。私の持つ日暮里駅のイメージと言えば狭く薄暗いホームの上にキャリーバックを持った利用客が右往左往する危険なイメージであった。それがいつの間にか広々として明るい駅に変貌してしまった。以前の面影はほとんどないが、利用者としてはとてもいい。そんな日暮里駅から数名ほど乗車したそうだった。日暮里を出ると次は船橋に停車する。
 その間に上野・日暮里から乗車した客の乗車券の確認が来るという。乗車券をあわてて出したが車掌は1人の乗車券も見ず、通り過ぎて行っただけだった。全席指定のため、車掌は端末に表示された座席表をもとにきちんと乗客が正規の座席にいるかどうかを調べるだけでいいらしい。日本語が分からない外国人でも利用しやすいことがこの方法のメリットだろう。青砥や高砂を通過した。スカイライナーなのだから当たり前だが、特急でも止まる駅を通過するのはまさに新感覚であった。(その真逆も体験したこともあるが…)次から次へと駅を飛ばす列車に乗るとやはり気持ちがいい。次の停車駅、船橋に到着した。
 船橋駅の雰囲気はどことなく日暮里に似ている。船橋の成田方面の次の駅は大神宮下(もちろんスカイライナーは停車しない)だが、そこもどことなく似ている。最近になって改築(高架化)した駅はどことなく同じ雰囲気でなんだか面白みがなく、なんだか残念だ。船橋では最後尾8号車のみドアが開く。あまり乗客の乗り降りの無い駅での適切な処置と言えるだろう。ほとんどありえないがもし仮に、船橋から団体が乗り込んで来たら8号車は一気にごった返すのだろうかと思考を巡らせていた。船橋の次は成田に停車する。
 さすがに成田から乗る乗客はいない。到着するホームはある意味降車専用ホームなのだろう。成田を出ると、少々高い高架橋を走行する。結構眺めはいいものだった。成田空港まで約7キロメートルを疾走するがその途中には田園風景が広がる。成田までの間にもここよりもさらに開けた田園風景がある。撮影にはとてもよさそうなスポットであったが、ここでの田園はなんだか山地にある田園のようで、東北新幹線からの車窓を見ているように感じた。次第に空を飛ぶ飛行機が目に留まるようになるが、すぐ空港直下のトンネルへと入り込む。
 トンネルに入る直前に進行方向右側にもう一つトンネルが見える。あれは旧線で、もともとはそちらが成田空港駅だった。旧線ではあるが、今でも東成田駅と名を変えて営業はしている。その先では日本一短い鉄道と言われる芝山鉄道に乗り入れをしている。トンネル内は先ほどとは大きく変わり、トロトロと走っているように感じた。無理やり現在のルートに変えさせられたためなのだろう。急カーブが続くようだ。
 おっと、空港についたか。さあ降りようなんてしていると大変な目に合う。成田空港は二つのターミナルがあり、それぞれ駅がある。終点の成田空港の手前には空港第2ビル駅がある。きちんと航空会社のチケットを持っている人はどちらのターミナルなのかをきちんと確認しなくてはならない。もし降りる駅を間違えてしまうと結構厄介だ。まあ、この時の私たちには全く関係の無い話だが。終点成田空港に到着した。
 さすがに空港らしい広々としたホームと広々としたコンコースであった。駅を出るとすぐ検問所を通ることとなる。たいていは身分証チェックだけだか、怪しまれると荷物と目的も確認される(実体験より)。一緒に来た友人は身分証を持っていなかったため、何か用紙に記入させられていた。成田空港に行く際は出国しなくても身分証(保険証でも学生証でも可)の携行と怪しくない(明るく元気な)雰囲気を出すようにすることをお勧めする。結構検問所の係員は明るい人が多い。(暗い人もいて、とことん暗い)



3. 3代目スカイライナーに乗車

 営業運転前の3代目スカイライナーである2代目AE形に試乗したことがあるが、ここでは大して詳しくは書かない事にする。概要を言えば、友人が沿線住民向けの試乗会に応募したところ当選、便乗させてもらったというわけだ。スカイライナーの方向幕(行先が表示される部分)には「試運転」と表示されていた。さすがに試乗会なんていう表示は出来ないだろうが、できればやってほしかった。
 今のような日暮里から空港第2ビルまでノンストップのダイヤに組みなおされる前だからいろいろな駅に停車した。もちろん扉は開かないが。ただ、どの駅に停車したのかはよく覚えていない。とりわけその頃縁遠かった北総線内での停車駅などほとんど覚えていない。唯一北総線内でわかる駅と言えば最後に停車した印旛日本医大くらいだろうか。その先では最高速度の160キロ運転を体験できた。何よりも停車から最高速度まで一気に加速するのを体験できたことは後から考えると貴重な体験であった。通常ダイヤではそんな体験は出来ないからだ。
 それから1年ほど後に3代目スカイライナーに乗車した。やはり本線より15〜20分程度早く成田空港に到着してしまったせいか、なんだか物足りない気分ではあった。



写真2 2代目AE形



4. シティライナーとなったAE100形に乗車

 まあ2章とあまり変わりはないが途中青砥にも停車するようになったのと、終着駅が成田になったことは特筆すべきだろう。もともとは現在(2012年夏)よりも運行本数が多く、成田空港にも乗り入れるダイヤがほとんどだった。3代目スカイライナーの運賃(2400円)より安い運賃(1920円)のため、安く済ませたい利用客に人気が出るかと思ったが結果はそうではなかった。通過するシティライナーの車内はいつも空席というより空車が目立った。1編成に3〜8人ほどだろうか、それぐらいしか利用客がいない。これほどまでも3代目スカイライナーへのシフトがあるとやや厳しい状況となるのだろう。
 さらに追い打ちをかけるように電力不足が襲った。電力不足の理由は東日本大震災の影響によるものだ。震災当日は全線で運転見合わせ、翌日には再開できた。しかし運行本数の少なさには驚いた。一本乗り遅れるといつ次の電車が来るかがまったく読めなかった時もあった。そんな中でもシティライナーを動かすことなどするわけがなかった。同年9月10日にはシティライナーの運転を再開したが、その間の行楽シーズンにより完全に3代目スカイライナーへの利用客のシフトが完了したらしい。それを物語るかのようにたいていのシティライナーが成田行きに変更され、もはや存在すら危ぶまれるようになった。
 そんなシティライナーを応援するつもりで2012年の5月連休にシティライナーに乗車した。どうせ貸切状態だろうと思ったが、意外と利用客は多かった。さすがに連休中の利用客は増えるらしい。青砥に到着したが、開くドアは8号車の1つだけ。これは船橋駅と同じである。何人乗車したのかはわからない。最終的に成田で降りたのは10人弱であった。途中で降りる人がいるかはこれもわからないが、たぶんいないだろう。



5. シティライナーの今後

 シティライナーを利用してみてわかったことだが、2代目スカイライナーでは空港アクセスにかなりの不備があったことを実感させられた。正直言って、わざわざ特急券を買ってまでして10分程度の短縮をしたいと考える人が少ないように感じる。全席指定席のため、途中駅から乗っても座席に座れるメリットはある。
 2代目までのスカイライナーでは、JR線から京成に乗り換えて利用するために日暮里で乗り換えるよりも上野で特急に乗り換えた方がよかった。その方が多少は時間がかかっても成田空港まで座って行くこともできるし、余計な料金を払う必要もない。場合によってはJRの成田エクスプレスの方が運賃・特急料金が高く、所要時間が少々長いというデメリットよりも乗り換えなしで行けるメリットが勝る。わざわざ日暮里や上野まで行き、京成に乗り換えるメリットは安くて少し早いというくらいだった。
 しかし、その「少し早い」が「かなり早い」に変化したことは言うまでもない。3代目スカイライナーの導入と新たな路線、成田スカイアクセス線の開業により状況は変化したのだ。成田スカイアクセス線のうち高砂・印旛日本医大間は既存の北総線を利用していて、スカイライナーは130キロ運転が可能。印旛日本医大・空港第2ビル間は新設で最高速度の160キロ運転が可能。要は高砂以西の本線は従来のスピードでも高砂以東ではほぼ全線にわたってスピードアップが図られていることになる。そのため従来の日暮里・空港第2ビル間最速51分から36分へと短縮され、「京成電鉄完全データDVDBOOK(メディアブックス)」によるとJRから京成への利用客のシフトが見られたそうだ。
 こんな華やかな3代目スカイライナーがいる中で、シティライナーの存在意義はあるのだろうか。特急料金(成田空港まで)が920円と同じ料金設定では利用客は伸びない。これがもし500円くらいで成田空港まで行ける有料特急となればシティライナーを利用する人も増えるだろう。時間はかかってもスカイライナーよりは安いから今まで京成本線経由の特急か成田スカイアクセス線経由のアクセス特急(どちらも特急券不要)を利用して成田空港へ行っていた人がほんの300〜500円ほどでだいぶ快適に移動できる。また、これまでよりさらに安い料金になることにより、JRはもとより高速バスからの利用客のシフトも期待できる。
 今後の京成電鉄の社運は案外シティライナーにかかっているのかもしれないのだ。



写真3 3代目スカイライナーとシティライナー



6. 使用写真

写真1 2009年12月5日日暮里駅にて撮影
京成電鉄100周年の記念ヘッドマークがついている。私が撮影した写真の中では貴重な写真だ。

写真2 2010年7月18日日暮里駅にて撮影
成田スカイアクセス線開業日翌日に撮影。多くのギャラリーにもまれながら撮影した。

写真3 2012年4月29日上野駅にて撮影
ここに3400形もいれば三世代スカイライナーが勢ぞろいだが、そうはいかず残念だった。

全て中川凌一撮影



7. 参考文献
  • 週刊歴史でめぐる鉄道全路線大手私鉄No.13京成電鉄(朝日新聞出版)
  • 京成電鉄完全データDVDBOOK(メディアブックス)
  • 日本の私鉄京成電鉄(広岡友紀著・毎日新聞社)





 
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