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〜 415系交直流近郊型電車 〜

社会交通工学科2年 1027番 大崎 意

1. はじめに

 交直流近郊型の決定版である415系は、1971年から1991年までの長きにわたって製造された。現在は、新型車両に押され、廃車も出ているが、今でも多くの仲間が存在する。今回は、そんな415系にスポットを当ててみたいと思う。



2. 415系一族について

 1960年代に、常磐線が電化。しかし常磐線は付近の地軸観測所の影響により途中区間から交流電化にしなくてはならなかった。一方で、九州地方でも門司港〜久留米が交流電化した。だが直流の山陽本線の関門トンネルを直通するためには交流、直流両方に対応する電車を造らなければならなかった。そこで国鉄はMT46(100kW)モーターを使用した交直流電車の401系(50Hz専用)、421系(60Hz専用)が登場した。車体は、準急型の153系をベースにした運転台で、両開き3つドアと、新世代近郊型電車の礎を築いた。そしてさらに出力を増強したMT54(120kW)モーターを搭載した403系(50Hz専用)、423系(60Hz専用)が登場したが、50,60Hzと電源周波数の違う両形式を並行で製造するのは経済的ではなく、常磐、九州の両地区に投入できる直流1500V、交流20000V(50/60Hz)の3電源に対応した415系を製作した。



3. 415系概要


表1 415系概要
0番台 100番台 500番台 800番台 1500番台
全長 19,500mm(中間車)、20,000mm(先頭車)
全高 3,654mm 3,670mm
全幅 2,900mm 2,950mm
電動機(出力) MT54B/D(120kw)
最高速度 100km/h
電気方式 AC20000V(50/60Hz)&DC1500V
初製造 1971197819821991(改造)1986
活躍 1971〜20121978〜活躍中1982〜活躍中1991〜活躍中1986〜活躍中




4. 415系の分類

 415系と一言で言っても20年という長きにわたって製造されたため、製造された時期によって仕様が異なっている。

*編成内の記号
Tc:モーターなし制御車(クハ)。
M:運転台なしのモーター車でパンタグラフなし(モハ)。
M’:↑にパンタグラフが搭載されている車両(モハ)。
Mc:モーター付制御車(クモハ)。
P:パンタグラフ
W:お手洗い


0番台

 1971年から製造された基本グループで、113系0番台をベースとしている。 このグループのみ両先頭車にトイレが装備されている。

編成は、[Tc411-300(W)]+[M415-0]+[M’414-0(P)]+[(W)Tc411-300]

 2012年3月に最後まで九州で運用していた14番〜19番ユニットの編成が運用を外れ、0番台の定期運用はなくなった。




写真1(左):最後まで原型をとどめていた大分車の0番台の一つのFO3編成。実際に原型車を撮影したのはこれが最初で最後だった。(2009年1月2日大分駅にて)

写真2(右):更新工事(ロングシート化、一部窓固定化)が図られたFO6編成。この撮影をした1週間後に運用を離脱した。(2012年3月7日下関にて)

写真3(下):Fo6編成と同様に更新工事を受けたFM9編成(当時)。この撮影1か月後に大分に転入。12年3月の改正で運用を離脱した。(2011年8月9日小倉にて)



100番台

 1978年から製造されたグループで、113系2000番台をベースとしている。0番台との差異は、トイレ窓の変更、クロスシートのシートピッチの変更などが行われている。
 また、トイレは1編成あたり1両となり、これから500番、1500番台とともにトイレ付の車両には車番+100となった。

編成は、[Tc411-100]+[M415-100]+[M’414-100(P)]+[(W)Tc411-200]

 こちらは、大分運輸センターに原型車が2編成おり、原型車の他にもセミクロスを保持している編成がいるが、門司港派出に所属している車両は、0番台と同様の更新工事を受け、ロングシート化が図られている。




写真4(左):原型を残しているFO117編成。更新工事を受ける仲間いる中で2012年2月に原型を保持したまま検査出場した。(2012年5月3日下ノ江にて)

写真5(右):Fo117編成と同様に更新工事を受けていないFO109編成。(2012年8月11日幸崎にて)

写真6(下):原型車の車内(2012年8月11日モハ414 109)




写真7(左):更新工事を受けたFo104編成。外見上の変化はあまりない。(2011年8月9日日代にて)

写真8(右):更新車の室内。オレンジや青を使って室内が明るい印象を受けた。(2011年8月3日モハ414 104)



500番台

 1982年から製造されたグループ。新製車では最後の鋼製車グループとなる。常磐線の混雑緩和を目的に製造されたため、トイレ車端部を除きすべてロングシート化されている。

編成は、[Tc411-500]+[M415-500]+[M’414-500(P)]+[(W)Tc411-600]

 投入初期は常磐線での活躍だったが、1986年に4編成が、2008年に2編成が九州に転属。鋼製車が常磐から消えた中で九州内では転属してきた全編成が頑張っている。
 また、500番台から白に青帯のスタイルで登場。1986年に九州に転属してきた500番台に影響されて475・457系をはじめ、キハ40などの一般型車両の新塗装のベースとなった。(しかし、車体上部に細い帯が描かれているなどの細かい差異はある)







写真9(上左):86年に九州に転属してきたFK513編成。1986年から2007年までは南福岡で過ごした後、2007年からは鹿児島の地で急行型電車を置き換え、ラッシュ時の主力となっている。(2008年8月18日鹿児島中央にて)

写真10(上右):九州に転属回送してきた415系K620編成。これから鹿児島工場に送られ、九州化工事が行われた。(2008年12月25日延岡にて)

写真11(中左):K620の回送から約3年。九州仕様に改造(とは言っても保安装置変更や塗装変更等小規模の改造)されたFO520編成。現在は大分に転属している。(2012年5月3日大分にて)

写真12(中右):K620編成とともに常磐線から転属してきたK607編成。こちらもFO507編成として活躍している。(2012年8月11日臼杵にて)

写真13(下中):本来、JR九州所属車には転落防止用幌は付いていないが、2008年にJR東日本から譲渡されたFO507(K607)、FO520(K620)は転落防止用幌がJR東日本時代のまま残っている。(2012年8月11日臼杵にて)



800番台

 1991年に追加されたグループ。113系800番台と0番台がベース・・・というか113系800番台と0番台から改造されたグループで、七尾線の直流電化に合わせて、交流の北陸本線へ直通するため交直車を仕立てあげねばならず、高価な交直流電車を新しくできず、当時直流区間しか走らず、交流機器を持て余していた特急「北近畿」用の485系から交直機器を移し替え、113系800番台と0番台に搭載。一方で、113系800番台の直流機器を485系に搭載する改造を行い、113系は415系800番台に、485系は、183系800番台へと改番した。

編成は、←小松・金沢[Tc415-800]+[M’414-800]+[Mc415-800]七尾→

 800番台は、ほかの415系とは違い、3両構成となっているため、415系唯一のクモハ車が存在する。
 現在でも、全編成が七尾線の車両として活躍している。一部車両ではJR西日本の地域色化で茜色に染まる車両も増えている。



写真14(左):七尾線に投入された当時の塗装。11年の冬に撮影しに行ったときはほとんど見ることができなかった。(2011年12月29日金沢にて)

写真15(右):地域塗装の車両。出くわす415系はほとんどこの塗装(2011年12月29日金沢にて)



1500番台

 1986年から製造されたグループ。他の415系とは違い、車体は当時最新の211系と同様のステンレス車体を採用。足回りは、共通性も考慮し、既存の415系と同様とした。
 また、勝田に所属している1500番台はJR化後に製造された車両もあり、その車両は変圧器の関係上50Hzにしか対応していない。
 製造時は、すべて常磐線に投入する予定だったが、冷房化とイメージアップのため一部編成が九州地区に投入された。

編成は、[Tc411-1500]+[M415-1500]+[M’414-1500(P)]+[(W)Tc411-1600]

 かつては常磐線で、鋼製車と組んで15両編成で活躍していたが、常磐線の運用はE531系やE231系に取って代わられ、現在は水戸地区と九州地区で活躍を見ることができる。
 2008年に、常磐線で余剰となったK525編成が、500番台のK607、K620編成とともにJR九州に譲渡。FM1501編成として活躍している。
 また、九州と常磐では帯の色が違い、常磐は濃い青色、九州は水色を使用している。



写真16(左):現在は、水戸線などで活躍する東日本仕様の415系(K541編成)。帯の色は濃い青。(2012年1月8日小山にて)

写真17(右):九州仕様の1500番台(FM1510編成)。帯の色は水色。(2011年8月7日下関にて)





 
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