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〜 初代のぞみ 300系新幹線 〜

機械工学科2年 1146番 二井 聡史






写真1 300系F9編成



1.試作車の誕生と量産化改造

 高速化を目指し、平成2年にJR東海が試作したのが300系9000番台で、従来の新幹線よりも車体断面を小さく軽量化し、1号車を除く15両が1ユニットをMTM3両とし、VVVFインバータ車を採用した。主変圧器やパンタグラフはT車に取り付けられている。台車はボルスタレス台車、空気抵抗を減らすためプラグドアを採用した。1991年にパンタグラフの数を3号車と15号車を除いて5基から3基に減らし、走行中は6号車のパンタグラフは降ろし、9、12号車で集電を行っていた。完成後、高速試験を行い325.7km/hの記録を残した。
 1992年に他の量産車に合わせ、ケーブルヘッドの形状、パンタグラフの交換など騒音対策を行い、15号車の329-9003の車販準備室を大きくして329-9501に変更してJ1編成として営業運転を開始した。



2.量産車の誕生と変更点

 高速試験でのデータを元に量産車としてJR東海のJ編成、JR西日本のF編成が製造されたが、先頭車のライトケーシングやノーズのプレスライン、ケーブルヘッド、パンタグラフカバーの形状を変更し、屋根の高さは50mm高く、窓の高さは50mm低くなった。




写真2 試作車J1編成

写真3 量産車J2編成



 J2〜15編成,F1〜5編成までこの仕様で製造されたが、プラグドアによる空気抵抗の削減と製造コストが合わないためJ16編成、F6編成以降の増備車はすべて引き戸に変更された。




写真4 プラグドア

写真5 引き戸



 量産車の登場からしばらくして、トンネル内で車体が揺れて乗り心地が悪くなることが判明し、1995年製造のJ30編成以降の量産車から9号車のパンタグラフを傾斜型ケーブルヘッドに変更し、6、12号車のパンタグラフカバー形状も変更され、1995年以前の車両も随時この仕様となった。
 700系の導入に伴い最終製造されたJ59~61は、700系と同じ低騒音シングルアームパンタグラフと碍子カバー、2面側壁に変更され、7箇所のケーブルヘッドを直ジョイント化し、他の量産車も1999年から随時パンタグラフ交換工事が始まった。





写真6 低騒音シングルアームパンタグラフ



 2004年から乗り心地改良工事が行われ、台車の空気バネを非線形空気バネに変更し、1,6,8〜10,12,16号車にセミアクティブサスペンションを搭載したが、J2~16,19,27編成は廃車期と重なったため工事の対象外だった。



3.試験車に戻るJ1編成

 2000年から運用を離脱し、2001年からは再び試験車として使用され、試験内容は全周ホロ、デジタルATC、車体傾斜システム、新型パンタグラフの性能テストを行い、後にN700系Z0編成が製造され廃車となり、322-9001だけ浜松工場で保管されていたが、リニア・鉄道館が出来るにあたり、現在ではそちらに保存されている。



4.300系の車内

 300系の座席数は普通車1123名、グリーン車200名の合計1323名で、普通車は0系から続く2+3列のリクライニングシートでJ編成がブラウン、F編成がグレーとなっている。3列シートの中央席は他席より40mm広く作られている。グリーン車は2+2列のフルリクライニングシートでF編成にのみシートの背面にフック、座席間の肘掛にオーディオと読書灯のコントロールスイッチ、テーブルは外側の肘掛から取り出すインアーム式で、足元にはフットレスが取り付けられている。





写真7 300系の普通車の座席(F9編成)



5.引退とLAST RUN

 300系の廃車が進み、引退までに残った編成はJ55、J57、F7~9編成でこのうちJ55、J57編成にはさよなら装飾が施された。3月11日で営業運転を終了し、3月16日にLAST RUNを迎え、東京駅発のぞみ329号新大阪行をJ57編成、新大阪発のぞみ609号博多行をF7編成が充当した。それぞれの各駅や沿線では大勢のファンが駆けつけ別れを惜しんだ。




写真8 前面の装飾

写真9 側面の装飾(先頭車)




写真10 側面の装飾(中間車)



6.自分の300系エピソード

 子供の頃から300系は好きな車両で自分ではあの独特の先頭形状が非常に気に入っている。新幹線に乗ることは度々あったが、300系にはなかなか当たらず、知らないうちに廃車が進んでいってしまった。
 2月の後半に祖父母の家に帰るため新幹線を使う機会があり、今まで300系に乗ったことがなかったので時刻表でダイヤを調べ、初めて300系に乗ってみた。行きは名古屋から新大阪までこだまでF9編成、座席は14号車の自由席だったが、電動車で加減速の時に車両が揺れて乗り心地があまり良くなかった。帰りは岡山から東京までひかりでF8編成、座席は1号車の自由席で、トレーラー車だったので加減速時の揺れはなく乗り心地は非常によかった。J編成には乗れなかったが一度でも300系に乗ることができてよかった。
 3月16日のLAST RUNにはサークルの友人と共に朝8時に東京駅の17番線で張り、10時52発のぞみ329号を他の鉄道ファンとともに最後を見送った。



参考資料
 鉄道ファン98,3  鉄道のテクノロジーvol.14





 
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