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〜 国鉄車両205系の生涯 〜

社会交通工学科3年 0129番 堀 治






写真1 オール205系で運転されている埼京線



1.はじめに

 1979年に登場した201系は、103系に代わる省エネ電車として登場したが、 量産中にコストダウンを図りながらも増備を行った。しかし、 『電機子チョッパ制御』の製造コストが非常に高価であったため、 財政的に厳しい状況になった。
 そこで、大幅なコストダウンの図れる車両として1985年に登場したのが205系である。 205系は、車体をこれまでの銅製からステンレス製とし、 大幅な軽量化と塗装工程を省略することで保守作業が大幅に軽減された。また、 車体全塗装から窓の上下にラインカラーを路線ごとにフィルムの帯で表わす方法を採ったので、 非常にすっきりとした印象を与えている。
 制御器も、201系・203系で採用された『電機子チョッパ制御』が前述の通り高価であったため、 国鉄で初めて省エネ効果が得られる『界磁添加励磁制御』を採用した。結果、 201系よりも優れた省エネ車両となり、その後、山手線を始め広範囲に渡って増備されて行く。



2.205系の増備開始

 205系は、主に103系置き換え用として登場。まず、山手線に登場し、 首都圏では埼京線・中央総武緩行線・横浜線・南武線等に配置されて行った。 京葉線・武蔵野線においては、全面デザインが大幅に変更されたものが投入され、 フロントガラスも曲面形状となった。相模線に導入された205系は、 前面形状も随分と異なるものとなり、初めから半自動扱いが可能である等、変更点は多い。



写真2 京葉線用は、前面形状が変更され塗装も白色となった




写真3 相模線用は、前面が独特の形状となった


 また、1990年より、ラッシュ時の混雑に対応するために客用扉を6カ所とした6ドア車も製造した。 現在、これらは全車埼京線・横浜線で運用されている。



写真4 混雑緩和目的で製造された6ドア車


 関西地区でも、少数ながら東海道山陽緩行線・阪和線に投入された。なお、 阪和線に投入された車両は、全面レイアウト変更・車外スピーカー設置等の変更点が見られる。 度重なる増備により、最終的にはJR東日本に1413両、JR西日本に48両が揃った。



3. 新形式の車両の登場による転配開始

 90年代には、列車本数増加に伴う小規模な転配が行われたが、 2000年代に入ってから首都圏ほぼ全体に影響を及ぼす大規模な転配が行われた。これは、 主に中央総武緩行線と山手線へのE231系の投入によるものである。



写真5 中央総武線で活躍したカナリヤイエロー色は、比較的早く消滅


 京葉線・南武線等に転用された車両は、ほぼ原形を保っているが、 武蔵野線用には勾配対策として制御機の『VVVFインバータ』化が行われ、 八高線・仙石線・鶴見線等では、 単編成化に伴い先頭車が不足するため中間車の先頭車化改造が行われた車両が登場している。 先頭車化改造された車両は、前面デザインが従来の車両とは異なる新しいものとなり、 乗務員室の機器配置もE231系に準じたものになった。



写真6 山手線から京葉線へ転属した一般顔の205系




写真7 武蔵野線へ転用された車両は制御機がVVVF化された




写真8 先頭車化改造を施され各路線へ転用された205系


 西日本では、東海道山陽緩行線に321系を投入したことにより、 2006年には全車が阪和線に転属したが、東海道線でのラッシュ時の本数不足により、 2011年に東海道線での運用を再開した。(ただし、帯は207系や321系に準じた色や配置になり、 運用も朝ラッシュ時に限定されている。)



4. 老朽化による廃車開始

 今までに、2008年に川越線での踏切事故により復旧が見送られた車両、 転配により余剰となった車両、 2011年の東日本大震災による津波で被災した車両の廃車等があったが、 老朽化に伴う本格的な廃車は2010年より開始した。



写真9 京葉線での運用を終え長野へ回送される


 まず、京葉線へのE233系の投入により本系列全車両の置き換えが実施された。 大半の車両が廃車となったが、 一部の車両は宇都宮地区へ転用されて日光線などで運用される予定となっており、現在、 長野・直江津・東大宮等の各車両基地に疎開されている。また、 本系列初の民鉄への譲渡として富士急行に譲渡され2012年2月29日より運転を開始した。



写真10 富士急行に譲渡され6000系と名乗った205系


 今後の予定では、現在、2013年度に埼京線、 2014年度に横浜線にE233系を導入し既存の205系が置き換えられることが発表されている。 今後数年の間に、205系も半数以上が廃車されることが予想される。



5. 老朽化による廃車開始

 省エネ電車として登場した205系も、やはり経年には勝てず四半世紀以上を経た現在、 ファンは勿論一般乗客の前から姿を消そうとしている。今後も205系の活躍に期待したいと思う。



6. 参考文献

  • 形式205系
  • 鉄道ピクトリアル 各号
  • 日本の旅・鉄道見聞録





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