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〜 豊橋鉄道 あのカーブを越えろ 〜

社会交通工学科 1年 1078番 瀧崎 孝典




写真1 井原カーブを曲がる780形784号



1.始めに

1−1.豊橋鉄道東田本線井原〜運動公園前の概要

 1982年に開通。開通年度以外は以下の表を参照。

表1 概要
営業キロ 0.6km
電停数 2
軌間 1067mm
電化方式 直流600V
複線区間 なし
単線区間 全線
最小半径 11m※


 ※我が国の鉄道において最小半径のカーブ(つまり日本一急なカーブ)。




図1 井原電停付近の地図



 上の地図の井原電停付近から下方(運動公園前方面)への分岐器が存在する。地図だけではイメージの沸きにくい方は、以下の事をやって頂きたい。
 まず用意する物。
  • 15cm定規
  • コンパス
  • ベニヤ板
  • Nゲージ用のフレキシブルレール
  • お好みの車両(T車推奨)
@ベニヤ板に半径7.3cm弱の円を描く
A円周に沿ってフレキシブルレールを曲げて釘で固定する
B車輌を手転がしで走らせてみる
 私は試したことはないが、トラなどの軽貨車でもない限り曲がることは不可能であると思う。これを150倍した物が、これから私の説明するr=11のカーブ、通称「井原カーブ」である。



1-2.誕生の経緯

 先ほどの地図に戻って頂きたい。井原電停付近の分岐器(ポイント)から下の方(運動公園前方面)に線を辿っていくと運動公園前方面から見て右側に、現在はメガワールドという眼鏡屋の店舗がある(ドライブスルーのあるロッテリアだった時期も)。本来は市が土地を買収し、道路を拡幅した上で併用軌道を敷設しようと考えていたのだが、建設費用が不足していた。結局道路の拡幅は出来ず、「いかに敷設するか」を試行錯誤した末、この様なカーブが誕生した。



2.現状

2-1.車輌に施した対策

 豊橋鉄道という会社は慢性的に資金難で、2009年にNPO団体の支援もあって導入した超低床車「ほっトラム」を新造するまで自社発注車は1925年開業時の100形(現在は形式消滅)以来存在せず、ほっトラム以外の車輌は全て他事業者から譲渡された車輌である。ここでは分かり易い例として、改造前・後どちらもMODEMO(ハセガワ模型)から模型化されている3500形(元都電7000形)を扱う。



写真2 都電7000形




写真3 豊橋鉄道3500形



 豊橋鉄道では、軌間が違うために台車を改造していたことと(履き替えではない)、更にもう一段ステップが設けられている(専用軌道の中しか駅のない荒川線では問題視されなかったものの、豊橋鉄道の電停は地上高が低く、大きな段差が生じるため)。しかし、そのステップが7000形のドア位置のままでは台車とステップが干渉してしまう為ドア位置を真ん中に変更。3500形の姿しか見て来なかった私はある日、7000形の実車を見て驚愕したのは言うまでもない。その他にも、元名鉄の780形は床下機器の位置変更で井原カーブの対策を行っている。なお、T1000形は車輌構造上の関係で井原カーブを曲がることは出来ず、800形は後述する問題の為に入線する事は出来ない為、2011年8月の時点では運動公園前方面への低床車の運用はない。



2-2.800形




写真4 800形



 800形は、2005年(平成17年)の名鉄600V線区全廃により譲渡されてやってきた豊橋鉄道初で、貴重な(株)日本車輌製の低床車(部分低床)である。(要は、伊予鉄道2100形の親戚)。この車輌は車体長が長いせいか、一般的に「井原カーブを曲がれない」と思われがちだがメーカーの担当者曰く、「構造上はカーブを曲がることは可能」であるが「全高が高い為運動公園前電停の行灯に干渉してしまう」(AO入試時のヒアリング調査で得た情報)ために運動公園前方面の乗り入れは行っていない。



3.展望

 運動公園前方面の運用のネック解消として、最も手っ取り早い方法は「カーブの緩和」が第一に挙げられている。私もこの案には賛成だが、土地を買収しようにもメインストリートに直面していて、且つ井原電停降りてすぐそこ、といった好立地である事から考えると地主(店舗側)が簡単に土地を譲る訳がない。その為、この方法には買収のための莫大な資金と交渉のための多くの時間が必要となる。そこで、私からは全長・全幅・全高を現在の主力車両である780形に合わせた(全長14530、全福2100、全高3765)低床車の自社発注を提案したい。



4.参考文献

とよはし市電を愛する会 http://www.toyohasisiden.com
MODEMO http://www.hasegawa-model.co.jp
鉄道ピクトリアル2011年8月臨時増刊号




 
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