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〜 宇部・小野田線について 〜

社会交通工学科2年 0016番 石崎 弘晃


1.はじめに

 宇部線は、新山口駅から宇部駅に至る路線で、山口県宇部市の市街地を経由している。また、小野田線は、宇部線の居能駅から 分岐し、小野田駅に至る路線である。この記事では、宇部線、小野田線について述べることとする。



2.概要

1) 宇部線




図1 宇部線路線図



 宇部線は、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本と表記)が所有する、全長35.2キロのローカル線である。新山口では新幹線、山陽本線 および山口線と、宇部では山陽本線と接続し、中心駅は宇部新川(写真1)である。また、居能からは小野田線が分岐する。
 宇部線の前身は1911年の軽便鉄道で、1943年に戦時買収の一貫で国有化された。居能からは1929年〜2006年までの間、宇部港 までの貨物支線が出ており、美祢からの石灰石輸送でかなりの本数の貨物列車が運転されていた。しかし、国鉄末期には、国鉄で ストライキなどが相次ぎ輸送列車がたびたびストップしたため、セメント工場が操業停止に追い込まれた。
 これらの問題から、宇部興産は28キロに及ぶ専用道路の建設を決定し、1982年に全通させた。80トン積載の大型トレーラーが 往来するようになり、鉄道貨物輸送が激減したため、居能〜宇部港間の貨物支線は廃止となった。また、宇部岬からは、セントラル 硝子工場への専用線(写真3)が分岐しており、居能〜宇部港間の貨物支線廃止後も1日2往復ほど列車が運転されていたが、これも 2009年9月に廃止となり、現在宇部線では貨物列車の運行はされていない。現在は1〜3両程度の旅客列車が、上り下り共に朝夕は 30分間隔、通常は1時間間隔で運転されている。




写真1 宇部新川駅




写真2 セントラル硝子への石灰石貨物列車(写真は積荷を降ろした後)




写真3 廃止されたセントラル硝子専用線



2) 小野田線




図2 小野田線路線図



 小野田線は、小野田と宇部線の居能を結ぶ本線と、雀田駅から分岐する本山支線からなる。  小野田線の前身は、1915年に開通した軽便鉄道で、宇部線と同様に石灰石、石炭などの貨物輸送に利用された。現在は、貨物輸送はなく 旅客列車のみであり、ほとんどの列車が単行で運転されている。小野田線は居能から分岐する路線であるが、全ての列車が宇部線の宇部 新川発着である。なお、かつては小野田港から小野田セメント(現:太平洋セメント)への引き込み線が延びていた。
 また、本山支線では、2003年まで旧型国電のクモハ42形(写真4)が走っていた。本山支線は、朝夕に5往復の列車が運転されているのみ なので、訪問の際には注意が必要である。




写真4 長門本山に停車するクモハ42形



3.車両

 現在使用されているのは、JR西日本の下関総合車両所に所属する105系電車および123系電車である。105系電車は、クモハ105形とクハ104形で 2両編成を組むのが基本である。また、123系電車は、両運転台のクモハ123形と呼ばれる電車で、国鉄時代に不要となった荷物電車を改造した車両 である。
 宇部線は主に105系2両編成(一部の列車は123系2両編成)で運転され、山陽本線の下関発着または厚狭発着の列車は、105系の基本2両編成にクモハ 105形またはクモハ123形を増結した3両編成で運転される。また、昼間の一部の時間帯は123系の単行列車もある。小野田線は、朝の一部列車を除き 123系の単行列車で運転される。なお、123系にはトイレが付いていないため、乗車の際には注意が必要である。
 現在、JR西日本では、地域ごとに定めた車両塗装の単色化を進めており、宇部・小野田線の車両も例外なく、中国地域塗装の濃黄色への変更が順次 進められている。今のところ、123系電車1両と105系電車1編成が塗装変更されており、3両編成の列車などでは混色となる場合がある。




写真5 105系電車




写真6 123系電車




写真7 単色化された車両



4.現況

 現在の終電は、宇部線が22時台、小野田線が21時台である。主な利用客は遠方から通学に利用する学生であり、過疎化・少子化の影響から年々利用者は 減少してきている。一時期、宇部線では、新山口で新幹線に連絡する「のぞみリレー号」と呼ばれる快速列車が運転されていたが、現在は普通列車に戻さ れ、無くなっている。
 また、宇部線、小野田線共に街中を走っているが、沿線は鉄道ではなく、道路を中心に発展してきたため駅周辺には商業施設、行政施設共に何も無く 不便であることから、ほとんどの住民は自家用車またはバスを利用する。朝夕の道路の混雑も、宇部市などでは人口が少ないことから、大都市のような 大規模な渋滞は発生せず、電車+徒歩よりも自家用車またはバスの方が圧倒的に早いため通勤需要も少ない。今後も利用者は回復することなく、減少が 続くと予想される。



参考文献

・週刊歴史でめぐる全国鉄道路線国鉄・JR No.07、朝日新聞出版、P22−P25

・鉄道ファン2011年7月号、付録「JR車両のデータバンク」、交友社



 
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