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 このようなニーズに応える為に、車両の特徴は近年の車両に標準的に搭載される三相交流VVVFインバータ制御を使用したものとなっており、作業効率の円滑化を図ると共に、高速化に伴う最高運転速度は時速110q/hとしている。
 私が今回ご紹介するH級電気機関車は、低コスト、重連運転の解消、スルー運転という課題を解決する為に製作された機関車であり、日本の鉄道有史以来、2例目・3例目となった機関車である。


◆ 誕生経緯
 国鉄以来、首都圏以南から北海道までの長距離貨物は東北筋の看板貨物列車として古くから運転され、青函航路を抜け、東北を通り首都圏へとしての動脈として『北たから』『北海ライナー』と愛称を付けられる程の特急貨物列車も運用されてきた。
 青函連絡船が青函トンネルへ変わり、その輸送量は飛躍的に。そして、確実に確保されるものとなった。
 しかし、首都圏〜北海道(五稜郭)の電化区間には2回の機関車交換が必要であり、スルー運転ができなかった。
 これを解決する為に製造されたのがEH500形電気機関車であり、東北本線の急勾配および、青函トンネルの連続勾配に対応する為に永久連結器を使用した二分割車体方式を採用している。
 これは国鉄のEH10以来のものであり、わが国では2例目なった電機機関車である。尚、余談ではあるが、EH10を開発する時に挙げられた問題として東海道本線の輸送状況の逼迫と関ヶ原越えによるモーター温度の上昇というものがあった。
 H級電機開発の経緯にEH500型と複合する点があるところも面白い。

 このEH500は1.300t貨物を最高時速110q/hで牽引できる性能を有しており、ED75形及びED79形重連で運用している黒磯〜青森間をこのEH500一両で同等の性能を発揮し、ED75型の重連以上の牽引能力を有している。また、最大1000tの貨物列車を25‰の勾配で牽引する性能と,青函トンネル内で故障した際に自力で脱出する性能も有している。


◆ 電気方式
 東北本線系統の貨物列車は、隅田川(新鶴見)〜黒磯間がEF65形(EF66形、EF210形、EF64形の運用もあり)。黒磯〜青森(信)間がED75形重連、青森(信)〜五稜郭間がED79形重連という形態で運用をおこなっていたが、EH500形はこれに代わって運用される目的で、首都圏〜北海道という広い交流区間を走行する為に直流1500V、交流20000Vとなっており、裏縦貫(北海道〜大阪間の日本海側の路線の別称)を含めた50Hz/60Hz対応となっている。


◆ 主電動機・主制御機器
 近年の鉄道車両では標準的となったインバータ装置を使用して三相交流誘電動機を制御するVVVFインバータ制御方式を採用しており、コスト低減の目的からEF210形同様に1インバータで2モータ制御(1C2M)方式が採用されている。
 8軸動輪としたことの最大の利点は東北本線の急勾配および青函トンネルの連続勾配に対応できることであり、重連運転が解消できるとともに運転冗長などが高められている。
 なお、機関車の性能はED75形電気機関車の重連が基本となっている。


隅田川発、札幌貨物ターミナル行き3057レを牽引するEH500 24号機 撮影:与野〜北浦和間



 
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