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LRTは、システムとしては完成の域に近づいていましたが、車両のほうに問題がありました。車両の床は依然として高いままで、ドア部分にステップがつき、高齢者や車椅子の利用者にとって大きな障害となっていました。そこで、1980年代から車両の床を低くする試みが始められました。最近、みなさんの町でよくみかける「ノンステップバス」の電車版です。はじめは従来の連節車の中間に「低床ゴンドラ」と呼ばれる、床の一部をうんと低くしてドアのステップをなくした車両を増結するといった簡易的なものでした。しかし、技術の進歩によって車軸の無い「独立車輪」が開発され、それによって1987年にはフランスのグルノーブルに床の60%を低床とした車両が登場し、ついに1990年には客室をすべて低床とした車両が登場しました。これによって高齢者や車椅子の利用客でも気軽に利用できるようになり、車両のほうもほぼ完成の域に達しました。これにより、ますますLRTの魅力が高まり、導入が促進されています。 また、乗り降りを楽にするには車両の床を低くするのではなく、ホームを高くするという方法もあります。一般の鉄道のように電車の床と同じ高さまでホームを上げれば床を低くしたのと同じことになります。これは日本では東京都電や東急世田谷線で行われ、バリアフリーに大きく貢献しています。ヨーロッパではドイツのハノーバーで行われ、最大全長75mの車両が走っています。ステップの解消は乗降をスムーズにし、停留所での停車時間を短くする効果もあります。 停車時間を短くして所要時間を短縮するために同時に別の施策も取り入れられています。それは、車掌を廃止してワンマン運転として、乗客の検札を省略するというものです。これは「信用乗車方式」と呼ばれ、乗客が事前に券売機で切符を購入し、車内の刻印機に切符を通すというものです。これによって乗客はどのドアからでも乗り降りできるようになり、乗降時間が短縮されるのです。日本では連節車には車掌が常務し、出入口が限定されているために乗降に時間がかかり、所要時間がのびてしまいます。 ![]() ↑リスボンの低床電車 ↑ポルトの低床電車 コラム:ヨーロッパでは自動車会社がLRTに関わる事例が見られるようになった。オーストリアのウィーンで導入されている新型電車はポルシェがデザインを担当し、イタリアのローマを走る電車はフィアットが製造、ドイツの大手路面電車メーカー「アドトランツ社」はベンツグループだ。また、ドイツのドレスデンではフォルクスワーゲン社が市内に分散している工場間の部品輸送にLRTの路線を活用している。貨物LRTは世界でもここだけだ。このように、ヨーロッパでは自動車メーカーも積極的にLRTを活用している。環境意識が日本よりはるかに進歩しているのだ。 |
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