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【第五章】LRTとは

 LRTとは、単なる路面電車ではなく、人と社会に配慮したまったく新しい交通機関です。その特徴の一つが「トランジットモール」です。「トランジットモール」とは、ショッピングモール(日本で言う歩行者天国)や商店街に路面電車やバスなどの公共交通機関を走らせたものです。自動車を締め出し、のびのびと買い物ができるようにし、また、電車やバスを走らせることで交通を確保し、利便性を向上させています。中心市街地活性化の目的からモール内は運賃無料としている都市も少なくありません。
 また、道路を走るだけでなく、場所によっては自動車の邪魔にならないよう高架や地下も走り、さらに郊外まで延びて通勤路線とするなど、さまざまな使い方ができます。たいがいは道路と分離された専用軌道を走り、さらに70〜100km/hという高速運転を行って所要時間の面でも自動車より優位に立っています。
 地下鉄と比較しても優位な面がたくさんあります。建設コストは地下鉄の10分の1以下(地下鉄:キロ当たり300〜350億円、LRT:キロ当たり10〜30億円)と格段に安く、さらに道路から直接乗り降りできるので長い階段を昇り降りする必要も無く、誰でも気軽に利用できるのです。これらのことから、新しい路面交通として世界中で活用されているのです。渋滞を緩和するために高速道路に沿って建設する都市や、さらには高速道路に代えて建設する都市もあります。多くの都市ではLRTの導入と同時にトランジットモールを整備し、交通規制を行って自動車の利用を減らすなどの試みが行われています。LRTの停留所に無料駐車場を併設して都心までは電車に乗ってもらう「パーク&ライド」という方式も好評で、日本でも新幹線の駅などで行われています。
 外国を走るほとんどのLRTは3両以上の連結運転をしています。フランスのストラスブールやハンガリーのブダペストなどでは9両連節(全長50m以上)の車両も走っています。日本の路面電車の多くはたった1両(全長11〜14m)という短い編成で運転され、長いものでも3〜5両(全長27〜30m)です。それに対して外国のLRTのほとんどが全長30〜50m、中には全長100mに達するものもあります。これは、外国のLRTがいかに多くの人に利用され、地域社会に貢献しているかを物語っています。また、LRTを支援する仕組みが日本よりずっと整備されていることもあるでしょう。LRTが走っている分自動車が減っているのです。


↑バルセロナの5車体連節低床電車


コラム:何も、独立した路線網を形成しているものだけがLRTではない。ドイツのカールスルーエでは、LRTが国鉄線と直通運転を行い、郊外まで足を伸ばしている。最高速度は90km/hで、ドイツ版新幹線「ICE」と同じ線路を走る。これによって、公共交通の利用者が以前の5倍に達したという。この方法はフランスのザールブリュッケンでも取り入れられ、国鉄線に乗り入れ、国境を越えてドイツまで足を伸ばす「国際LRT」が運行されている。


 
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