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【第四章】その後の展開

 1970年代に入ると、世界中のいたるところで自動車による社会問題が浮き彫りとなってきました。交通渋滞、交通事故、都市機能の低下、中心市街地の衰退、環境破壊など、それによる経済的・社会的損失は計り知れないものとなります。従来は道路を整備することでこれらを解決しようとしてきました。しかし、道路が整備されると自動車利用が促進され、ますます渋滞がひどくなるという悪循環になってしまいます。そこで、路面電車が再び注目されるようになりました。路面電車は前述のすべての項目において自動車より優れ、人と環境にやさしい乗り物として再評価されるようになったのです。
 路面電車はLRT(Light Rail Transit−ライト・レール・トランジット)と名を変え、次世代交通機関として1978年にカナダのエドモントンに開業したのをきっかけに世界中の都市へと波及していきました。この20数年ほどの間に数十カ国、50都市以上で開業しています。主にフランスやアメリカを中心に導入され、アジアなどでも導入されています。


↑LRT化構想もある岡山の路面電車
 スタイリッシュな低床電車「MOMO」


コラム:日本以上の自動車社会と化しているアメリカだが、実はLRTの導入に世界一積極的な国なのだ。世界で初めてLRTを導入したのはお隣のカナダであるし、それに触発されて各地にLRTが建設された。ポートランドでは、市民が都市内高速道路の建設に猛反対し、ほとんどの路線が中止を余儀なくされた。その代わりに市民が要求したのがLRTだ。アメリカのLRTは郊外と都心を高速で結ぶ、いわば通勤路線としての形態をしている。現在、アメリカでは日本以上に公共交通の整備が行われているのである。そのうち、アメリカが自動車王国と呼ばれなくなる日が来るかもしれない。


 
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