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 今度は民間の十勝バスで広尾を後にした。元国鉄の広尾線があったこの区間が民間会社で、夢物語となった様似−広尾間がJRバスなのはなぜだろう。普通逆だと思うが。北海道特有の○○5線などの停留所が続く。広尾線と言えば、かの有名な幸福駅だが、どうやら見逃してしまったようだ。もう一つ有名な愛国駅は一瞬だがばっちり見る事ができた。辺りは暗くなり、街の光が近づいてくると、まもなく帯広である。久しぶりに大きな街に来た感じだった。  銭湯を探すのに街をさまよってしまった。帯広も北○条西○丁目という住所表記になっていて、整然と碁盤の目条に区分けされていた。だが少し違った所があったりして、迷いやすかった。先頭の女将さんに聞いてみると、駅前長崎屋が出来た際の区画整理で斜めの道が生まれたのだそうだ。なるほど、駅前にこの町のショッピングの拠点ともいうように大きな長崎屋の店舗がある。区画整理で碁盤の目が崩れる、何とも皮肉な結果かもしれない。それと札幌と違ってJRが碁盤の目を斜めに横切っているのも迷う原因だったかもしれない。駅は最近高架化されたばかりなのか、とても綺麗だった。改札口が上りと下りで分かれている。九州の宮崎で見たタイプだ。自動改札化されているが、端の有人通路が開いていて駅員も居ない。なんて無防備なと思ったが、この後この駅に来る列車は皆無に等しい。だから問題ないのであろう。ホームに上がると、もう列車は来ていた。
 まりもに乗るのだが、このまま札幌に戻ると根室本線の帯広−池田間を乗り残してしまうので、前日に降り立った池田にもう一度行く。とにかく、乗り潰し最優先なのである。暗くて何も見えないのでほとんど寝ていた。
 夜の池田駅は、当然ながら何も無かった。改札業務は夕方のかなり早い時間に終わっているらしく、駅員も居ない。先ほどの列車もだから、ワンマンで運転士が集札していた。外は暗く不気味なのでずっと駅の中で過ごした。
 特急まりもで池田を発った。今旅行3回目の寝台である。今回は上段なので、景色は見えない。翌日早朝の追分駅で降りる予定だったので、車掌にその旨を伝えてすぐに就寝した。そこまでは良かったのだが…。追分駅に着く少し前、車掌は起こしてくださった。私は身支度を済ませてドア前に行き、列車を降りた。しかし何か違和感がある。眼鏡を付けていなかったのだ。カバンの中にあるだろうといつも入れている所を探ってみた。が、見当たらなかった。「ちょっと待ってください!」と急いで中を捜しているところに車掌がやってきて、「乗んな!カバンを中に入れて!」と言われた。私はすぐにそうした。そしてすぐにドアは閉まり列車は発車した…。眼鏡は寝台の床に落ちていた。おまけにひん曲がっていた。どうやら眼鏡を付けたまま寝てしまって、寝台の上段からいつの間にか落としてしまって私か他の誰かが踏んづけてしまったようだ。おまけに車掌と運転士にとんだ迷惑をかけてしまった。加えて乗ろうとしていた早朝の夕張行き普通列車は追分始発なので、南千歳より向こうに行ってしまうともう乗れない。仕方なく、札幌まで乗り通した。とにかくもう大失敗である。
 
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