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 特急とは対照的に、車内はすいていて、私達も座る事ができた。渡島大野経由で行ったのだが、下り特急列車だけが通る七飯−大沼間の線路がどうなっているのかは分からなかった。前日の台風の影響で、沿線の木々がかなり倒れているようだった。やはり被害は相当出ているようだ。左車窓に大沼の風景が見えてきて、列車も大沼に到着。ここでこの列車は前1両が海側の渡島砂原経由、後ろ1両が内陸の大沼公園経由に分かれて、森で再び合流するはずだったが、やはり特急の走らない渡島砂原経由の路線がまだ復旧していなかったので、どちらも大沼公園経由となった。大沼公園を出て、列車は順調に進むかに見えたが、ここでまたしても予期せぬ事態が起こった。大沼公園の次の赤井川で、予定時刻を過ぎても発車しなかったのである。その間に森駅で抜かれるはずの北斗5号に抜かれ、次の7号に乗ろうと思っていた私の顔は青ざめた。次に特急が停車する駅は森で、そこまでの間に7号にまで抜かされてしまうと、持っているグリーン券が使えなくなってしまうのだ。結局1時間も停車し、ようやく発車したわけだが7号に抜かれる事はなかった。だが森まではまだ数駅ある。それまでに追い抜かれるとアウトなので気が抜けない。森までの列車の中で不安な時を過ごしたが、その後は順調にいって、なんとか追い抜かれる事はなかった。ここでも特急のダイヤを乱さないために普通列車は犠牲になっているようだった。
 普通列車好きのM田さんも、さすがにこのまま普通列車に乗っていると危険なので一緒にスーパー北斗7号に乗る事にした。綺麗な曲線を描いた噴火湾を右手に見ながら、列車は進んでいった。対岸に有珠山が見える。長万部からM田さんは倶知安・小樽経由の函館本線で向かいたいとの事で、動いているか分からなかったが、とりあえずここで降りられた。私はそのままスーパー北斗7号で札幌に向かった。JR北海道のグリーン車は初だったが、とても良かった。最初に驚いたのが、無料で飲み物が付いてくる事だ。お代わりも自由という事で、これは素晴らしいと思った。座席は3列シートで、ゆったりしている。おまけに長旅だからと心配していた携帯の充電だが、グリーン車にはなんとコンセントが付いていて、この後何度もグリーン車に乗ったが、その度にお世話になった。リクライニングとともにレッグレストなどもボタン操作でできるようになっており、ラジオも付いていた。やはり普通車とはかなり差別化が図られているようだった。洞爺、伊達紋別、東室蘭と、引き続き噴火湾沿いに進み、東室蘭から内陸部に入った。温泉町登別を通り、苫小牧の次の沼ノ端から千歳線に入った。と言っても、こちらの方がメインルートである。南千歳から先は以前家族旅行で乗った事のある区間なので2度目である。地下鉄接続の新札幌を経て、終点の札幌に着いた。
札幌での用事というのは、高校の時の部活の旅行にOBとして参加した際のレポートを、出さないまま旅に出てしまったので、ネットカフェで作成して送るというものだった。幸いすぐにネットカフェの方は見つかり、3時間ほどで作業を終える事ができた。この夜乗る予定の夜行オホーツクの発車時刻までには、まだまだ時間があったので、夕飯の店を探すのも兼ねて夜の札幌の街を歩いてみた。この時初めて気づいたのだが、札幌市の住所は皆、北○条西○丁目というような表し方になっていて、碁盤の目上の街づくりをしたという事は明白だった。そうこうしているうちに、オホーツクの出発時刻が近づいてきたので札幌駅に移動。
 札幌駅で、M田さんと再会した。M田さんはこれから夜行のまりも号で釧路・根室に向かわれるそうである。私もふるさと銀河線を乗り潰した後、釧路・根室に向かうのでまた会いそうな予感であった。気動車の中に寝台客車が連結されているという珍編成が入ってきた。
 夜行オホーツクで札幌を後にした。ここからは初乗車区間である。江別、岩見沢、美唄、砂川、滝川、深川、旭川と停車し、石北本線に入った。函館本線は何度も通ることになる。初乗車のJR北海道の寝台車の感想はと言うと…特に本州のものと違いは無かった。というのも、気動車に挟まれた寝台客車という事で、独特の揺れというものがあるかと思っていたが、意外に機関車牽引の時と変わらなかったのである。それにしても、この「北海道フリーきっぷ(グリーン車用)」はすごい。34860円でグリーン車はもちろん、“寝台車”までもが乗り放題なのである。私はこの旅行中計5回も寝台を利用したので、もろにその恩恵を受けた、というよりも寝台料金だけでほぼ元を取ってしまった。この辺りには私がよくネタにする下りが一日に1本しか列車の止まらないという駅があるはずだが、いつの間にか寝入っていたので気づかなかった。気がついたら進行方向が逆になっていた。という事は遠軽を過ぎている。建設の経緯でこうなったのだろう。この後ふるさと銀河線に乗る予定なので、早朝の北見で降りないといけない。終点まで行くわけではないので、寝過ごさないように細心の注意を払った。空もすっかり明るくなり、駅の直前で町を長いトンネルで抜けると、北見に到着。
 
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