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〜 鶴見線創設に関わった人 〜

社会交通工学科3年 0156番 山田 徹

1.はじめに

 一昨年に、開業80周年という節目を迎えた鶴見線であった。
 そこで、鶴見線の創設に関わったとされる浅野総一郎・安田善次郎・白石元治郎・大川平三郎 についての記事を書いた。



2.浅野総一郎について




写真1 浅野総一郎肖像


 浅野総一郎は1848年富山県の生まれ。 若い時は醤油作りや畳表等様々な事業に手を出したが、失敗続きであった。 上京後、砂糖水や食物を包む竹皮等の事業に成功し、多くの財を成した。
 そうして築き上げた財で、船舶業にも進出。その後、 先進国の発展ぶりから重工業の発展は国の発展と考え、 重工業発展のためには原料・製品の輸送が出来る港湾施設の必要であると考えた。 港湾施設を作る為に、遠浅であった鶴見・川崎の海岸を埋め立てる計画を立てた。 この際に安田善次郎・大川平三郎らの資金援助により埋め立て事業は成功した。
 埋め立てを機に製鉄・石油関係等の工場が進出し、 さらに工場とつながる鉄道(現在の鶴見線)も開通した。 この鉄道事業も浅野総一郎の発案によるものであった。
 これらの功績が評価されて駅名が浅野総一郎の苗字より「浅野駅」と、 家紋の扇より「扇町駅」と命名された駅が今も残っている。



3.安田善次郎について




写真2 安田善次郎肖像


 安田善次郎は1838年富山県の生まれで、浅野総一郎出身の村の隣村であった。 安田善次郎は当時の財界の中心人物であり、起業・資本金において大きく貢献した人物である。 その額は、明治45年~大正2年頃における80万円 (日本銀行公式ホームページにある計算式を用いた場合、 当時の1062.5387倍であるため現在の価値に直すと、およそ8億5003万960円になる)であった。
 多額の資金援助によって浅野総一郎の事業に貢献したため、 安田の「安」・善次郎の「善」を取って「安善駅」と名付けられ、 駅周辺の工場地帯は「安善町」と呼ばれるようになった。
 ちなみに安田善次郎は、東京大学の安田講堂を作ったことや、 安田生命(現:明治安田生命)の創設者であることで有名である。



4. 白石元治郎について




写真3 白石元治郎肖像


 白石元治郎は1867年福島県の生まれで、伯父の養子となり越後高田・仙台等で育つ。 大学卒業後実業家を目指すに当たり、渋沢栄一を義父とする教授に相談したところ、 浅野総一郎の名を出され、浅野総一郎の下で働くことになる。 ここで英語力を見込まれて石油部の支配人に、さらに東洋汽船の支配人となった。 この間には浅野総一郎の次女と結婚して婿となった。 その後日本鋼管を川崎の埋立地に設立し、鶴見線の前身である鶴見臨港鉄道の発起に尽力した。
 これまでの働きが認められ、白石元治郎の苗字から「白石町」と名付けられ、 そこにある駅は「武蔵白石駅」となった。



5. 大川平三郎について




写真4 大川平三郎肖像


 大川平三郎は1860年埼玉県の生まれで、渋沢栄一の親戚であった。 渋沢栄一は王子製紙をはじめとする数々の事業によりかなりの実業家であった。 浅野総一郎とは事業の一環で知り合い、浅野総一郎に対して資金援助を行っていた。 後に大川平三郎は王子製紙の経営者となった。
 大川平三郎は鶴見臨港鉄道を立ち上げる際に、発起人・取締役となって尽力した。 鶴見臨港鉄道発起に大きく貢献したため、 大川平三郎の苗字から「大川町」と命名された町が出来て、そこの駅は「大川駅」となった。



6.おわりに

 今回の記事で、鶴見線のルーツを深く知ることができた。 初めは何もなかった漁村が、埋め立て事業によって工業都市となり、 暮らし・営業を円滑に進めるために鉄道を作った結果、 現在の鶴見線・沿線の環境が出来上がった。
 鶴見線が工業路線と呼ばれる所以はここにある。
 皆さんも路線のルーツを調べてみよう。 きっとこの記事のように路線ができた経緯・功労者のこと、 さらには地元の町の由来がきっと見えてくるだろう。



7. 参考文献

  • サトウマコト著 鶴見線物語(浅野総一郎・白石元治郎肖像引用)
  • 神奈川県立図書館発行 社史と伝記にみる日本の実業家‐人物データと文献案内‐
  • 由井常彦著 安田善次郎果報は練って待て(安田善次郎肖像引用)
  • 日本銀行公式ホームページ内Q&A 『昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?』 http://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/history/11100021.htm/
  • 埼玉県公式ホームページ内埼玉ゆかりの偉人(大川平三郎肖像引用) http://www.pref.saitama.lg.jp/site/ijindatabase/syosai-44.html





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