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〜 鹿児島におけるLRT(LRV)とバスの平面乗り継ぎについて 〜

機械工学科OB 今田 洋平

1.緒言

 近年、日本では富山を中心に路面電車(LRT、LRV)とバス又は自動車の乗り継ぎについて、 ヨーロッパ等を模範にしている事例が多くなっている。
 私は、2011年春に旧JR富山港線をLRT化した富山ライトレール線に乗車し、 終点岩瀬浜駅を訪れた。岩瀬浜駅では、 富山ライトレールと富山地方鉄道バスが運行するフィーダーバスに平面乗り換え出来る。 しかし、当時はフィーダーバスに使用するバスはツーステップの小型バスであった。
 鹿児島でも同じような事例があり、 鹿児島市電谷山線(1系統)終点谷山電停(注:JR指宿枕崎線谷山駅とは場所が違う)において、 前述の岩瀬浜駅と同様に市営バスやあいばす(鹿児島市コミュニティバス) と平面乗り換えが出来るようになっている。今回はこの事例について主に取り上げる。
 谷山電停は、日中6分おきに郡元、天文館方面の鹿児島駅前行が発車している。 郡元では、純心学園や鹿児島大学、鹿児島中央駅方面の唐湊線(2系統)に乗り換え券発行 (IC乗車カードRapiCaではリーダータッチのみ)で無料乗り換えが出来る。特に、 谷山〜郡元間は専用軌道のため上り(鹿児島駅前方面)では遅延は一般鉄道並にほとんどない。 利用客もラッシュ時を中心にかなり多い。



写真1 谷山電停の様子(左側が一般電車9500形、右側が全低床1000形ユートラム)



2.鹿児島市交通局について

 鹿児島市交通局は、電車(市電、LRV)とバスを走らせており、 電車部門は公営の市電にしては健全な経営である。運賃は大人160円、小人80円の均一制である。 しかし、バス部門が大赤字で、電車とバス合算では赤字である。 このため、2012年4月からバス部門1つの営業所を民間委託することになった。
 鹿児島市電では、2002年に純国産初の超低床電車1000形ユートラム(3連接)を導入し、 純国産初の技術ということで鉄道友の会ローレル賞を受賞した。 しかし、当時の市長が客室部分に出っ張りがあってはならないと主張したために、 台車や機器の配置で客室の定員に難があった。 後継に2007年に7000形ユートラムU(5連接)を導入し定員を増やした。 現在1000形が9編成、7000形が4編成の合計13編成が所属している。それゆえに、 概ね30分間隔くらいで超低床電車が運行されていてダイヤも専用ダイヤが組まれている。



3. 大規模な緑化軌道事業

 鹿児島市電は、フランスのストラスブールや熊本などよりは後発になったが、 日本国内では大規模な緑化軌道事業を展開しており、専用軌道以外ではほとんどが芝生軌道である。 更に、芝生を刈るために旧性能の500形を改造して芝刈り電車兼散水電車(桜島の火山灰対策用) を開発した。しかし、交通局の方によれば、 火山灰による絶縁などによる遅延等発生しているという。



写真2 芝生軌道の様子(7000形ユートラムU)



4. 谷山電停横付けの市営バス

 谷山電停では鹿児島市営バス14番谷山線と平面乗り換えが可能である。 14番谷山線は、谷山電停(1便のみ市街地の市役所前発あり) からJR谷山駅を経由して慈眼寺公園を経由して高台に位置する慈眼寺団地を結んでいる。 交通局に取材した際に、 交通局のバス部門の方によると14番谷山線は全便ノンステップバスでの運行である。 運行間隔はバラバラではあるが大体30分おきの運行で朝7時から夜22時まで運行 (土日は一部違いあり)である。



写真3 14番谷山線のノンステップバス(慈眼寺団地)


 谷山電停の駅構造としては、 谷山電停自体に屋根が被さっていて雨や鹿児島特有の火山灰からさらされない構造になっている。 私が取材した際の天候は雨であったが、市電からバスの乗り換えの際に雨一つ濡れなかった。 また、LRV(ユートラム)からノンステップバス(14番谷山線) の乗り換えは完全平面による無段差でどちらとも車椅子積載可能である。 このことからマスコミや鉄道雑誌は岩瀬浜の事例をよく取り上げるが、 谷山の場合は完璧な『完全平面』である。しかも、 谷山電停の乗り換えは数十年前から実施している。 但し、完全に雨や火山灰にさらされない構造やノンステップバス化は近年のことである。 この構造によりお年寄りや車椅子や妊婦さんやベビーカー使用の方や重い荷物を持った方に 大変やさしいLRV、駅、バスである。



写真4 谷山電停とノンステップバス車内




写真5 ノンステップバス車内から撮ったユートラムU(7000形)と谷山電停の段差


 しかし、問題点もある。それは、 一日一本走っている14番谷山線の市役所前発着便や主に県庁通勤者をターゲットにした 33番慈眼寺・与次郎線は谷山電停ロータリーには入らないことである。 このバスは近くの国道側の谷山電停バス停に停車する。 さらに、動物園、知覧、枕崎方面等の民営バスも入らないことである。 これは、谷山電停ロータリーの狭さなどであろう。
 他にも、脇田電停(JR指宿枕崎線 宇宿駅)においても 17番宇宿線(八州団地方面、小型バス運行)や 18番大学病院線(鹿児島大学医学部、歯学部、桜ヶ丘団地方面、中型ノンステップバス) を接続で運行しているが、屋根無しや付近の渋滞など課題点もありそうだ。 これらの路線もかつては市街地方面直通(18番は今でもごく一部あり)であった。



写真6 谷山電停とノンステップバス車内



5. 鹿児島市交通局電車事業部の方へ質問(一部のみ)

Q1. 市電優先信号について
私:現状では郡元(南側)と涙橋間は市電優先信号ですか、今後全線導入はありますか?
交通局:郡元(南側)と涙橋間はもともと専用軌道でしたのでやりましたが、 他の路線への導入計画は今のところありません。

Q2. 信用乗車制度
私:海外(主にヨーロッパ)や広島電鉄(実験のみ)では信用乗車制度を導入していますが、 貴局の導入計画はありますか?
交通局:市電は160円均一なので導入計画はありません。

 私の感想として、鹿児島市電の遅延の原因として、センターポール化し ているのにも関わらず、遅延が発生していてその原因が右折する自動車にあると思う。 また、信用乗車制度は5連接のユートラムUの乗降が不便な構造で車内移動が大変であ るからお聞きした。




写真7 センターポール化(写真はユートラム)


追記(JR九州鹿児島中央駅の改札の方への質問)

Q.鹿児島市電又はJRが停止した場合は振り替え乗車は行っていますか。
 (7月後半に市電で指宿枕崎線併走区間で架線トラブル発生のため、この時、交通局は  市営バスを列車代行運行)
JR九州:市電との振り替え乗車は行っておりません。

私は、関東等のように併走鉄道会社間の振り替え輸送の必要性を感じた。

お忙しい中、取材に協力していただいた鹿児島市交通局、 JR九州鹿児島中央駅の方々に感謝いたします。



おまけ




写真8 鹿児島市内に実在するバス停(詳細はWebで検索を!)




6. 参考文献

  • 洋泉社MOOK 徹底解析!!最新鉄道ビジネス 洋泉社





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