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〜 大糸線E127系について 〜

社会交通工学科 1年 1151番 吉江 和洋

1.E127系導入の過程

 E127系はJR東日本のローカル向け直流近郊型電車として、1995年に新潟地区に登場した。つづいて1997年に100番台として松本地区に登場した。この2つの地区では急行型の165・169系が普通列車として活躍しており、ラッシュ時の混雑や乗降に時間かかるなどの他、老朽化の問題もあった。そこで、すでに導入していた701系に準じた3ドア2両編成として導入された。0番台は701系から前面デザインが若干変更になったものの、100番台では701系と同一の前面となった。




写真1 秋田地区で活躍する701系(2008.11.22 青森にて)




写真2 大糸線のE127系100番台(2010.11.3 信濃常盤〜南大町間にて)



2.E127系の特徴

2-1.座席配置

 近郊型の区分として登場したE127系ではあるが、0番台の車内は701系と同じロングシートで構成されている。一方で100番台は片側がオールロングシートではあるが、反対側はクロス(ボックス)シートとなっている。これは大糸線が北アルプスに沿ってあるため、山側の座席をボックスシートとしたためである。これにより朝夕のラッシュ対応と観光路線としての2面性に対処している。また、クハE126-100のトイレと中間のドアの間は混雑緩和のためにロングシートとなっている。


2-2.モーター

 E127系は0・100番台共にVVVFインバータ制御であり、JR東日本では唯一である東洋製のGTOを搭載している。甲高い音が特徴で、私鉄では割と多く採用されているが、JRでは珍しい存在である。余談だが、大糸線沿線を舞台にした(所謂2次元系)アニメが以前制作され、その中で実際にE127系が登場するのだが、外観・内装のディテールは勿論、このモーター音まで忠実に再現されているという。


2-3.その他100番台のディテールについて

 E127系は2両固定編成で、先頭車前面には電気連結器を備えており、最大で3編成併結した6両編成で運転ができる。また、ワンマン運転装置を搭載しており、昼間の閑散期にワンマン運転を行っている。100番台には一部に英語放送が新たに流れるようになり、外国人観光客が多く利用する大糸線にとって非常に便利なものとなっている。100番台には登場時から3編成(A10〜A12)に霜取り用パンタグラフが装備されており、これは通電用のパンタグラフとは向きが逆に設置されている(シングルアームのため)。また、クハE126に搭載されているのも特徴の一つである。2008年には霜取りパンタをA7〜A9編成の3本に新たに増設している。モケットは登場時より紫色が使われているが、一部編成は2008年頃に濃い青色に変更されている。




写真3 E127系V4編成、2010.3.14 新津にて



3.車両運用とATSについて

 現在E127系100番台は2両編成12本が松本車両センターに所属している。かつては中央本線の富士見、辰野、篠ノ井線の塩尻までの直通運用を受け持つなど、広範囲での活躍が見られたが、現在は大糸線以外での定期運用は無くなっている。これにはATSが大きく関係している。導入当時から装備されていたのはATS−SN(現在はPs)型であり、中央本線・篠ノ井線(松本〜塩尻間)の乗り入れ区間はATS−P型が整備されている。そのため、乗り入れ時は危険であったと考えられる。また、大糸線内でのワンマン列車増加に伴い、そのような直通運用を115系に任せて対応させたのも要因の一つである。ちなみに、このダイヤの整理により昼間の列車本数が見直され、松本〜穂高・有明間の区間列車が廃止、快速列車が全て各駅停車化された。このため、昼間の列車は土曜休日を中心に非常に乗車率が高くなっている。
 なお、2008年のダイヤ改正により115系の南小谷までの列車がE127系に変更され、115系は信濃大町以北には乗り入れなくなり、信濃大町〜南小谷間の普通列車はすべてワンマン列車となった。

 2011年現在では、
  下り:3223M,3235M,3239M,3241M,3245M,3133M,3253M,3255M
  上り:1520M,1522M,3226M,1538M,1542M,3242M,3246M,3132M

の8往復以外をE127系が受け持つ。特に朝のラッシュ時間帯、信濃大町発松本行きの3224Mとその送り込みとなる3221Mは、大糸線の普通電車では最長の3本を併結した6両編成で運転される。なお、松本駅では6番線が大糸線専用ホームである。これは大糸線が元々私鉄であったことの名残である。そのため大半の列車は6番線発着であるが、6番線の有効長が5両分しかないため、写真のように6番線以外から発着する(ダイヤ改正により発着番線が変更されている)。




写真4 松本駅に到着した3224M 2010.2.17撮影



 一方で、2008年より順次ATS−Pの取り付け工事が行われ、2010年に全編成に取り付けが完了、2011年3月より使用が開始された。ただし、ATS−Pが使用されるのは松本駅と北松本〜島内駅間までのわずか2km未満である(2011年現在)。




写真5 A10編成、2011.1.15撮影



 大糸線用ホームの6番線は写真のようにずれて配置されている。6番線には、そば屋があり観光客にも好評である。また、年中通して市販のアイスも100円で販売している。
 冬には雪を盛大につけてくることもある。



4.E127系に関する最近おこった出来事

その1:パンタグラフふっ飛ばし事故

 2010年5月14日9時15分頃、北松本〜島内間での踏切に於いて、荷台にプレハブ小屋を載せたクレーン付きトラックが進入したところ、クレーンが架線と接触してトロリ線が緩む事故が発生。その直後に下りワンマン列車5325M(A9編成)が踏切に進入、緩んでいた架線に沿ってパンタグラフが動きショート、後に衝撃で側面ガラスを溶かしながらパンタグラフは線路端に落下した。すぐに運転士が異常に気づき非常ブレーキをかけて停車したため、脱線は免れた。この事故で乗っていた修学旅行生数名が軽いけがをした。復旧には午後までかかり、多くの列車に運休と遅れが発生した。

 一方で、一日市場駅で行き違う予定であった3228M(筆者乗車列車)は南豊科〜中萱間で立ち往生し『缶詰』となった。約45分後に安全が確認され代行の手筈が整ったことから非常用梯子を用いて脱出できるようになり、それから約30分後にアルピコ交通(松電)と黒部観光が最寄りのスーパーマーケットから、代行バスを出した。この対応では「早く電車からださせろ」、「スポーツの練習試合があり、迎えが来たので降ろしてほしい」、「線路を増やせば逆方向にすぐいけるに」、「急病人がいたらどうするつもりだ」、「代行バスやタクシーは何故すぐ来ないのか」、「運転士や車掌が若造だから対応が遅い」「駅長が悪いんだな」、「新潟に帰れなくなったらどうするんだ」、「ボーっと人の話を聞いているだけで良いのか、それが対応の仕方なのか」、などといった運転士・車掌・線路・駅長(?)・JR東日本に対して、一部の乗客から非難・批判が殺到した。




写真6 田んぼの中でパン下げ留置中、乗客がまだ梯子で降りている最中である。



その2:久々の「富士見」表示

 2010年11月16日、この日篠ノ井線では空転が相次ぎダイヤが乱れていた。その結果、大糸線を一往復する115系充当の3239M〜1542Mに運用編成が間に合わないことになり、急遽E127系4両で代走した。そのため、久々に本運転で「富士見」の幕を掲示した。ただし、松本から先は115系の所定の運用に戻している。これは前述のATSの関係もあるが、それ以前にE127系の予備車が1本2両しかないため、富士見まで運転すると大糸線の列車が運転できなくなってしまうためである。




穂高にて撮影



その3:節電に大活躍のE127系!?

 2011年3月の大震災以降、東日本を中心に電力不足が続いている。JR東日本長野支社でも節電のため様々な取り組みをしているが、その中の一つにE127系で115系の運用を一部置き換えて節電する試みである。7月頃から行われているようで、平日の昼間に松本の基地で“寝ている”E127系を用いて松本〜長野間の列車1往復を代走している。E127系は209系に準じて製造されているため、115系に比べると大幅に電力を削減できるとも言える。3両から2両に減車になるのでちょっと乗車率が気になる所ではあるが、今後も代走はあり得そうである。



5.今後の展望

 1997年に登場して以来、すでに10年以上活躍してきたE127系であるが、まだ活躍場所のまわりがMT54モーターばかりなせいか、まだまだ新鮮な感じが残っている。しかし、あくまでも169系の置き換え目的だったので編成数が多くない上に、もう一度増備するということも恐らくないと思われる。そのため、活躍場所は拡大しないであろう。また、ATS−Pも本格的に使用され始めたので、中央本線・篠ノ井線への直通運用も再びできるかもしれない。噂ではATS−P工事完了の暁には1本が塩尻〜辰野間の区間列車になり123系「ミニエコ―」を置き換えるのでは、とも言われていたが、しばらくなさそうである。次に大きな転機が訪れるのは、おそらく211系転属時であろう(これも噂よりかなり遅れている)。



6.《おまけ》鉄道模型(Nゲージ)のE127系

 マイクロエースから4両セット、KATOから2両セットが発売されている。実はマイクロエース製には重大な欠陥が!!車内の座席配置が本物と逆向きになってしまっている。また、KATOからは2010年に登場し、クオリティが高いが、プロトタイプはパンタを吹っ飛ばしたA9編成だったりする(苦笑) なお、KATOから霜取りパンタがない編成も製品化される。



7.参考文献

 なし。



 
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