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〜 名古屋市営地下鉄 〜

大学院理工学研究科 研究生 11102番 栗原 一暢

3.路線

 名古屋市営地下鉄は、東山線、名城線、名港線、鶴舞線、桜通線、上飯田線の6つの路線から構成される。各路線は軌間や集電方法の違い、車両の形状、運転方法にも特徴がある。路線の概要を表2にまとめ、以降路線ごとに軌道や車両に関して説明する。


表2 路線の概要




(1)東山線
 東山線は、名古屋の地下鉄で一番古い路線で、開業当時は1号線と呼ばれていたが、1969(昭和44)年に一般公募により「東山線」と愛称が決定した。車体の色は、画家の杉本健吉氏が「地下でも明るく見やすいように」と黄色を制定した。なお、開業当初から安全装置として、打子式ATSという日本でも珍しいものが採用されていたが、2004年3月より安全性向上のため車内信号機付ATCに切り替えられた。今後の安全対策として、2015年度に全駅ホーム可動柵設置が計画されており、それに伴いワンマン運転の検討もされている。2002年度には朝ラッシュ時間帯に女性専用車両の導入がされ、2008年度には夕方ラッシュ時にも拡大している。
 運転区間は高畑(H01)〜藤が丘(H22)の20.6kmで、終電の藤が丘発岩塚行き、高畑発星ヶ丘行きを除き、この区間を往復する。ここで特徴であるのが、名古屋駅のホームである。名古屋駅は島式であるのだが、混雑緩和を目的に1番線、2番線の位置がそれぞれずれている。上社〜藤が丘間は高架式となっており、途中にある上社駅は後の1970年に完成でした駅である。図4に東山線の軌道配線図を示す。
 愛知万博でのアクセスとして海外利用客も多かったことから、藤が丘と名古屋の発着の際には車内アナウンスに英語の他、中国語、ポルトガル語、朝鮮語が入っており、現在でも名残で聞くことができる。東山線では、かつて冷暖房装置がない黄色い電車(通称:黄電)が走っていた。開業当時からの100形2両は、日進市のレトロ電車間にて保存展示されている。最後まで活躍したのが、写真2にある250形・300形であった。2000年までに300形等は5050形に置き換えられたことで、冷房化100%が完了した。さらに2007年からはN1000形が導入され、チョッパ制御装置でアルミ車体の5000形が、順次置き換えられる予定である。2011年現在、写真3の5000形17編成、写真4の5050形27編成、写真5のN1000形4編成、計48編成が活躍する。表3に現在の車両編成表を示す。





図4 東山線軌道配線図





写真2 東山線250形・300形(引退)





写真3 東山線5000形





写真4 東山線5050形





写真5 東山線N1000形


表3 東山線車両編成表




(2)名城線・名港線
 名城線は、ナゴヤドーム前矢田(M14)を運行上の基点として28駅、26.4kmを48分で一周する。しかしナンバリングの基点は、金山(M01,m01)である。名城線は1965年、栄町〜市役所間からスタートした。信号設備では東海道新幹線に次いで、日本で2番目に車内信号機付ATCを採用した路線であり、無絶縁軌道回路によるものでは日本初であるのが特徴である。
 名古屋で2番目に作られた路線ということで2号線と呼ばれていたが、一般公募により「東山線」と同時期に「名城線」の愛称が付いた。また当時は、東山線が車体全体を黄色に塗装していたが、名城線では黄色の補色である紫色の帯を追加した。久屋大通駅は、1989年に桜通線が開業した際、乗換駅としてできた比較的新しい駅であり、壁画なども周辺駅と異なりデザインされたものになっている。駅間が近いため、隣の栄駅から久屋大通駅を見ることができる。
 しばらくの間、大曽根〜名古屋港・新瑞橋間の運行形態が続いたが、本来は大曽根〜名古屋港間が名城線を指し、その他の区間(金山〜新瑞橋間)は4号線である。1999年に砂田橋まで、2002年に名古屋大学まで、2004年に新瑞橋まで延伸し、4号線はようやく全線開通した。これにより日本で初となる環状運転を行うようになった。この際、分かりやすくするために環状部を「名城線」、枝線部を「名港線」とした。
 案内表記に「右回り」、「左回り」という表現を用いることから、若干方向を掴みにくいこともあるので注意したい。運転方法は、環状運転する電車と、大曽根(野球開催時にはナゴヤドーム前矢田まで延長)〜名古屋港を往復する電車がある。終電間際には瑞穂運動場東行きや新瑞橋行き、名古屋大学行きといった珍しい行き先を目にすることができる。
 市役所から引込み線を利用して、名城工場で車両の検査・点検を行っていたが、環状化した際に工場を名古屋港にある名港車庫に移転し、現在はこの名港工場とナゴヤドーム前矢田の大幸車庫がある。図5、図6に名城線・名港線の軌道配線図を示す。2020年度に名城線・名港線にも設置の検討がされている。
 2000年に冷房化100%達成したことで、名城線の1000形等(写真6)の黄電は姿を消し、現在では写真7のステンレス車体に紫帯を巻く2000形(写真7)のみの運行となっている。2000形は1989年の名古屋デザイン博の際に登場し、環状化した2004年まで増備し、計36編成が活躍する。なお、長期にわたり増備されたことから1999年後期から製造された車両は、モータのソフト変更が行われている。2006年より毎年ドラゴンズトレインを、2010年にはクリスマストレインが運行され、ユニークな車内アナウンスを聞くことができた。表4に車両編成表を示す。





図5 名城線軌道配線図





図6 名城線・名港線軌道配線図





写真6 名城線1000形(引退)





写真7 名城線2000形


表4 名城線・名港線車両編成表




(3)鶴舞線
 1976年、伏見〜八事間からの開業であった鶴舞線であるが、これまでの東山線や名城線とは異なり、名鉄に車両の規格を合わせた形となった。これは翌年の赤池延伸時に、名鉄豊田線(豊田市まで)との相互直通運転を行うことを想定したためである。また、当初から車両に冷房装置が付いている。なお、ラインカラーは名鉄の車両(赤)と区別をするために、青色としたという。開業当初車両基地が無かったため、荒畑〜御器所間にある道路上から地下に搬入された。
 その後北西方向に延伸し、1993年に庄内緑地公園〜上小田井間が延伸した。これによって、名鉄犬山線(犬山まで)とも相互直通運転を行うようになり、鶴舞線の両端が名鉄で挟まれ、豊田市から犬山まで一本でいくことが可能になった。また、この時1編成あたりの組成を4両から6両に変更された。しかしながら2003年3月のダイヤ改正では昼間の運行間隔が見直され、平日6分間隔、休日10分間隔となってしまった。さらに2011年3月のダイヤ改正により、大半の運行が岩倉止まりとなっている。平日朝のみ、名鉄犬山線内急行の岩倉行きと犬山行きが設定されている他、稀に扶桑行きや柏森行きを見ることができる。
 地下鉄車両は、赤池〜日進間にある日進工場で、車両の検査・点検を行っている。図7の鶴舞線軌道配線図にも示している。
 開業当初からの3000形(写真8)や名鉄100系・200系の他、その後増備された3050形(写真9)、さらに2011年秋にはN3000形が新造される。N3000形に関しては、現段階では詳細な情報がない。3000形は本市初めての冷暖房付き車両であった。また、3159編成の中間車には、6連化の際に余剰となった3000形2両が組み込まれており、形状や音(3000形はチョッパ、3050形はVVVF)の違いがあり、一般の利用客でも判断することができる。鶴舞線の編成表を表5に記す。





図7 鶴舞線軌道配線図





写真8 鶴舞線3000形





写真9 鶴舞線3050形


表5 鶴舞線車両編成表




(4)桜通線
 桜通線は混雑の激しかった東山線のバイパスとして造られ、1989(平成元)年に中村区役所〜今池間が開業した。1987年に試作車両が完成し、開業前に赤い帯を巻いた桜通線が、鶴舞線で運転された。1994年には野並まで延伸し、ATOによる自動運転が行われ、ワンマン化された。
 この路線の特徴として、当初からワンマン運転を実施することを見越していたため、全島式ホームに統一して安全確認を容易にしている。そのため、運転台は他の路線と異なり、右側に設置されている。また、車両の検査を日進工場で行うため、丸の内に鶴舞線への連絡線がある。  しばらく中村区役所〜野並間の運転で落ち着いていた桜通線であるが、2011年3月に徳重まで延伸し、計画されていた全路線の建設が終了した。図8に現在の桜通線の軌道配線図を示した。新しく開業した4駅には、当初からホーム可動柵が設けられている。その後徐々に既存駅にも設置され、2011年7月に全駅でホーム可動柵の設置が完了した。設置期間にはホーム隅にシートに覆われた可動柵や、調整中で稼働しない可動柵も見ることができた。これら可動柵は、深夜帯に一般の電車を回送して駅に送られてくる。
 車両は写真10の6000形20編成、写真11の6050形4編成が活躍する。徳重延伸前までは、名古屋の地下鉄で初のVVVFインバータ車両である6000形のみ運行であったが、現在技術を取り入れ、ニーズに対応した6050形が延伸用として増備された。6050形にはドアチャイムだけでなく開閉ランプが、2次車からは車内LCD(ハッチービジョン)が、初の試みとして設けられている。
 このように、初の試みは、何故か桜通線に取り入れられることが多いようである。5連から6連になる予定であったが、需要予測等見直しによって5連のままとなった。表6は現在の車両編成表である。





図8 桜通線軌道配線図





写真10 桜通線6000形





写真11 桜通線6050形


表6 桜通線車両編成表




(5)上飯田線
 2003年、上飯田〜平安通間が開通した。2駅わずか0.8kmであるが、名城線との接続駅である平安通から名鉄小牧線に相互直通運転をすることで、名古屋市内への移動を容易にしたのである。それ以前は、上飯田〜平安通間を徒歩で移動する人や、自家用車で中央線の駅に出る人、渋滞に巻き込まれながらバスで移動する人もいたようである。
 開業が遅れたのには建設費等、数々の問題があった。主な原因として、周辺の土地の事情により工事が難攻になり、建設費がかさむことであった。これには、名古屋市や名鉄が建設することは困難であった。そこで第3セクターである「上飯田連絡線」を設立し、この会社が建設・保有し、名古屋市と名鉄に貸すという形になった。ちなみに、味鋺〜平安通間を上飯田連絡線と呼んでいる。
 現在この路線は平安通から出発しているが、かつての構想ではさらに南下し名城線のバイパスとして延伸する計画であった。そのためか、ナンバリングは上飯田が基点である。小牧駅では新交通システム「ピーチライナー」と接続していたが、累積赤字が原因で2006年に廃止となっている。
 平安通(上飯田線)、上飯田ともに開業当初からホーム可動柵を設置し、当初から運転士によるワンマン運転を実施している。平安通は地下鉄、上飯田は名鉄の駅の印象を受ける。また、上飯田で名古屋市と名鉄の乗務員が交代をしていたが、不効率であるため現在は全区間名鉄の乗務員により運転される。運行は、ほとんどが平安通〜犬山間であり、上飯田で折り返す電車はないが、ラッシュ時に小牧で折り返す電車は存在する。
 2003年に上飯田線が開通し、地下鉄車両として7000形2編成が登場した。同時に名鉄では300形が登場し、いずれもほぼ共通設計となっている。そのため、本市で初めて転換式クロスシートを採用し、IGBT素子利用のVVVFインバータとなっている。唯一異なるのが、名鉄車では日車ブロックによるステンレス構造を採用したが、地下鉄車では軽量ステンレス構造なことである。なお、地下鉄車では初のセミクロスシートが存在する。
 2駅2編成であるが、図9に上飯田線の軌道配線図を、表7に車両編成表を示した。





図9 上飯田線軌道配線図





写真12 上飯田線7000形


表7 上飯田線車両編成表






 
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