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3. 24時間運行の仕組み

 さて本題である。NY地下鉄の特徴と言えば、真っ先に挙げられるのが『24時間運行』 である。地下鉄が24時間動いていることは、利用者にとって非常に便利なことだ。
 一方、事業者側にしてみれば、24時間運行は非常に難点が多い。一番の問題点は、 通常、列車の走っていない夜間に行なう保線作業ができないという点である。列車を 安全運行する上で、保線は欠かせない。では、NY地下鉄ではどのように保線作業が 行われているのだろうか?

 それは、前章で述べた、各駅停車と急行線とが複々線になっていることを利用する。
 夜間になると、各駅停車および急行のどちらかの線路を通行止めにし、もう一方の 線路で列車を運行させるのだ。基本は、1晩かけて一方の線路の保線を行ない、翌日は もう一方の線路の保線を1晩かけて行なう。数日交代で行われる場合もあるが、年間を 通した保線日数が、各駅停車路線と急行路線で半々になるように行われている。

 故に、深夜帯は、各駅停車が動く日もあれば、急行が動く日もある。大工事の際には、 各駅停車・急行とも運休にする場合もある。
 また、別の路線を経由・迂回する場合もある。NY地下鉄は、営業運転では利用して いない連絡線が多数あり、深夜帯には、路線図に載っていないルートを通ったりする。

 これらは、路線や日によって様々であり、夜間や早朝に地下鉄を利用する際は、十分に 注意する必要がある。


とにかく…、

非常に複雑でややこしい。




写真3−1 複雑な乗り場案内板



写真3−2 深夜運休を知らせる張り紙(北行きは迂回運行中)


 ただ、原則として、NY地下鉄は急行線を基準としており、各駅停車は急行の補完線 という位置づけをしている。そのため深夜は、各駅停車を運休させ、急行が各駅に 停まるという形態になっている。

 この仕組みは、はたまた東京のJR中央線と形態が似ている。早朝と深夜帯に 中央・総武線各駅停車が御茶ノ水以西に乗り入れず、千葉県側で区間運行となる。 その代わり、中央線快速電車が各駅停車となり、本来は通過する各駅停車の駅に 停車するというシステムと同じだ。


写真3−3 早朝・深夜帯は各駅停車と  写真3−4 早朝・深夜帯の中央・
して運転される中央快速線        総武線各駅停車は御茶ノ水で折り返す


 では果たして、ニューヨークの市民は、「今日は××線が運休」などと把握できて いるのかと言えば、事実、複雑過ぎてほとんどの人が全く把握できていない。そのため、 長年の経験と勘で利用している人が多い。
 またNY地下鉄の駅は、2〜10分も歩けば、別の路線の駅がある。そのため、とりあえず 来た列車に乗り、目的の駅に着かなくとも、目的地の近隣の駅まで行って、あとは徒歩で 移動するといった人がほとんどだ。特に夜間の列車本数は、1路線20〜30分に1本という 運行間隔で、日中に比べて極端に少ない。そのため、このような方法をとった方が早く 目的地に着くといった場合も多い。



写真3−5 半径約1km以内に15路線14駅が存在する Times Square近辺


 
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