←前のページへ次のページへ→
〜 203系について 〜

社会交通工学科1年 0152番 山崎 大侍

1.はじめに

 1982(昭和57)年11月15日、国鉄(現・JR東日本)常磐線我孫子〜取手間の複々線化に伴う「増備用」として、 国鉄常磐線と営団(現・東京メトロ)千代田線の相互乗り入れ区間に導入されたのが、国鉄203系通勤型直流電車である。
 営業運転開始から27年あまりの間、それまで運用されていた103系1000番台を置き換えながら、他の線区に 転属することなく一途に取手〜代々木上原間を走ってきた203系だが、今後は後継となるE233系2000番台によって 置き換えられ、次々と姿を消すことになる。




写真1 203系(金町にて)




写真2 後継のE233系2000番台(乃木坂にて)



2.203系の特徴




図1 203系編成図



 203系は、車体寸法、室内構成、主回路機器などの基本的な仕様について、当時すでに量産に入っていた201系電車を基本としており、 制御方式も201系と同じく電機子チョッパ制御を採用している。
 ただし、203系では車両の軽量化のため、車体や側面ドアのアルミ合金化、戸袋窓の廃止、台車枠の薄肉化、基礎ブレーキ装置の踏面両抱きブレーキ式への変更(201系はディスクブレーキ式)が行われている。 これによって、電動車比率をこれまでより低く抑え6M4Tとすることが可能となっている(従来の103系1000番台は8M2T)。

 さらに、営団千代田線との相互直通運転に備え、前面の非常貫通扉の設置、A-A基準に準拠した火災対策、ATC関連機器の搭載、地下線内用誘導無線・国鉄線内用空間波無線装置の搭載を行っている。また、3.3km/h/sという高い加減速度に対応するため、台車の歯数比を6.07と大きくしている(201系は5.60)。 運転台についても、営団側との相互乗り入れ協定に基づき、できる限り機器配置を従来の103系1000番台に合わせてある。

 この他、国鉄の新たな通勤電車としてのサービスを提供するため、201系と同様のアコモデーションの採用、空気ばねの採用による乗り心地向上、冷房装置の搭載、緩衝器の改良などが実施されている。

 車両外観の特徴として、先頭部は前面部分がやや後退しているものの全体として切妻構造を基本としており、前面・側面には、路線識別用としてエメラルドグリーン(青緑1号)の帯が巻かれている。



3.トンネル内排熱問題の解消と203系の増備

 203系導入以前、国鉄常磐線と営団千代田線との相互直通運転用の車両として、国鉄側では103系1000番台が使用されてきた。ところが、その103系1000番台は抵抗制御方式を採用していたため、起動時および停車時に使用される主抵抗器からの排熱によってトンネル内の温度が上昇するという問題が発生し、営団側から国鉄側に対して車両のチョッパ制御化の要望が早期からなされていた。

 203系がチョッパ制御を採用したことによって、列車の起動時には主抵抗器の損失なく制御することができ、ブレーキ時には回生ブレーキを使用することで、エネルギーを熱という形で排出することなく回収することができるようになった。
 チョッパ制御である203系の導入による効果は大きく、「増備用」に登場した203系試作車(1編成10両)に続いて203系量産車が導入されることになり、203系の最終的な陣容は17編成170両となった。これらの203系によって、抵抗制御方式を採用していた103系1000番台は千代田線直通の運用を外れ、一部車両は快速線に転用または105系に改造された。

 ちなみに、203系全17編成のうち、当初の8編成は0番台、1985(昭和60)年以降に製造された9編成は100番台に区分されている。100番台では、車両の更なる軽量化を図るため、台車を205系ベースのボルスタレス台車に変更している(その他の仕様は0番台と共通)。




写真3 千代田線内の203系100番台(霞ケ関にて)




写真4 203系0番台の台車(201系ベース)




写真5 203系100番台の台車(205系ベース)



4.203系の現状

 2010(平成22)年4月現在、203系は全車(17編成170両)がJR東日本東京支社松戸車両センター(東マト)に所属しており、編成番号は、0番台8編成がマト51〜マト58、100番台9編成がマト61〜マト69となっている。
 運用範囲は全編成共通で、常磐線各駅停車取手〜綾瀬間および東京メトロ千代田線綾瀬〜代々木上原間となっており、小田急線内を営業列車として運行することない。
 運用は、209系1000番台およびE233系2000番台と共通であり、営業列車として終日にわたって運用される(207系900番台は2010年4月現在既に廃車済みとなっている)。


5.203系の今後

 第1項でも述べたとおり、203系は、今後増備されるE233系2000番台によって置き換えられることが正式に発表されている。
 E233系2000番台は、207系900番台を置き換えた第1編成に続いて、2010(平成22)年8月5日に第2編成が東急車輛から出場しているため、近いうちに203系にも廃車が出ることが予想される(この記事をお読みになっている頃にはもう廃車が始まっているかもしれない…)。



6.203系豆知識

 203系の試作車であるマト51編成は唯一、車体側面の車号表記の色が路線識別帯と同じエメラルドグリーン(青緑1号)になっている(他の編成はすべて黒色)。もしこの編成を見かけることがあったら、この部分もしっかり観察しておきたい。ただし、203系の廃車はいつ始まってもおかしくない(この記事をお読みなっている頃にはもう廃車が始まっているかもしれないが…)ので、記録はお早めに…。




写真6 マト51編成の車号表記(クハ203-1)



7.参考文献
◎交友社 鉄道ファン
 1982年11月号(通巻259号) p64-73
  新車ガイド1 シティロードのニューフェイス 203系チョッパ電車登場

 1982年12月号(通巻260号) p34-35
  特集:国鉄新形通勤電車(1) 「アルミ車体のチョッパ電車 203系」の項

 2006年5月号(通巻541号) p58
  特集:究極の「標準形通勤電車」103系 「103系にまつわる…7 〜本社時代」の項

 2008年10月号(通巻570号) p39
  特集:JR首都圏通勤電車図鑑 「203系0・100番台」の項

 2009年1月号(通巻573号) p44-45
  特集:今 記録しておきたいJRの旅客車 「203系・207系900番台〔東〕」の項

 2010年3月号(通巻587号) p28
  特集:絶滅危惧車2010 「203系」の項

 2010年7月号(通巻591号) 
  特別付録:JR各社の車両配置表・JRグループ車両のデータバンク


◎ 鉄道ピクトリアル
 1982年12月号 p57-63 203系通勤型直流電車の概要


◎交友社 鉄道ファン 公式ホームページ
 2010年8月6日掲載 鉄道ニュース E233系2000番台,第2編成が松戸車両センターへ
  http://railf.jp/news/2010/08/06/113700.html


 
- 16 -
次のページへ→