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社会交通工学科1年 0016番 石崎 弘晃 |
1.概要 1) EF66の誕生 写真−1 EF66型0番台 1959年に、汐留〜梅田間で運転を開始したコンテナ特急「たから」の好評を受け、 当時、国鉄では東海道・山陽本線に高速貨物列車の拡充を推進しており、1966年 10月には最高速度100km/hで運転する1000tの高速貨物列車の運転が開始された。 牽引機には、当時新鋭のEF65型500番台が使用されていた。しかし、単機では所定の ダイヤをこなすことができず、重連で使用することになった。だが、重連ではオーバー パワーで不経済となり、運用効率も悪くなる。 そこで、EF65型に代わって、当初の計画通りに1000tの貨物列車を単機で牽引し、100km/h運転が可能な強力機としてEF66型が誕生した。この高速貨物用の強力電気機関車の開発は、1965年頃から始まっており、1966年9月には試作機EF90 1が落成した。 EF90は所期の目的を達成するため、強力な主電動機が開発された。EF90と後のEF66に使用された主電動機MT56は、当時EF65型に使用されていた主電動機MT52と同じ 大きさながら、出力は650kWで、MT52型の425kWに対し、約1.5倍の出力を持つ。これにより、EF66は3900kWという破格の出力を可能にした。これは、EF65の出力(2550kW)の 1.5倍以上でまさにモンスターだった。 また、大出力に対応する大容量機器搭載により、軸重は16.8tにまで増大した。これは国鉄の在来線線路規格最高の甲線のみ入線可能な 軸重であるが、この機関車の使用目的と入線区間はほぼ限定されているので特甲線専用の設計となった。 外観も斬新なものとなり、EF65などの統一されたデザインとは異なる異彩を 放つものとなった。また、前面形状は外観だけでなく、高速機として万一衝突した際の 乗務員の保護を配慮した形状といえる。 EF90の各種試験を踏まえ、この機関車はEF66として量産が始まる。機器類全般の細かい 改良は行われたが、スタイルを含め大きな設計変更はなく、1968年に15両、翌年に5両が 製造された。 試作機も改造を受け、EF66 901として他の20両と共に高速貨物用として活躍。更に、 1973年から1975年にかけて35両が製造され、計55両のEF66型0番台が作られた。 また、 1973年から製造された機関車には“ひさし”が追加された。これはパンタグラフから飛び散る 油と鉄粉で窓が汚れるのを防ぐためである。 国鉄からJRに移行する時には試作機を含む56両すべてが引き継がれ、40両はJR貨物、 16両は寝台列車牽引用としてJR西日本の所属となった。 2) 100番台 写真−2 EF66型100番台 JR貨物では、貨物列車の増発によって機関車が不足し、それを補うために14年ぶりにEF66 の製造を行った。国鉄時代の設計を踏襲したが、車体デザインは企業イメージのPRを考慮して 車体デザインを一新、外見は新形式車と見まがうようなスタイルで登場した。そのほかにも、 機器類の改良など細かい変更が行われた。 最大の特徴は通年型のエアコンを装備し、0番台に比べ大幅に乗務員の居住性が向上した 点である。エアコン装備の100番台と扇風機しかない0番台とでは夏季の常務環境が著しく異なり、 乗務員からは当日の乗務機が100番台だと喜ばれたという話もある。 この100番台は1989年から 1992 年までに33両が製造された。また、最初に製造された8両とそれ以降とで多少の形態的 差がある。 2.現況 1) JR貨物 2010年2月現在、全ての機関車が吹田機関区に所属し、合計数は63両。そのうち0番台は30両、 100番台は33両全てが現役である。JR貨物の0番台の更新工事を受けた車両は、以前は100 番台に似た塗装であったが、現在は変更され、国鉄色に似た塗装となっている。また、かつて JR貨物の試験塗色機として20号機が存在した。 EF210型等新型機関車の増備により0番台の廃車が進行しているものの、東海道・山陽本線だけ でなく、東北にも足を伸ばすなど幅広く運用されている。 写真−3 旧更新色 写真−4 新更新色 2) JR西日本 国鉄時代に寝台列車の連結数を増やすため、EF65型からEF66型に牽引機が置き換えられた。 JRに移行する際、JR西日本に16両が引き継がれ、全て下関に配置された。 国鉄時代と変わらぬ活躍を続けていたが、寝台列車の廃止の進行により、運用が減少。 2009年3月に最後の九州行き寝台特急「富士・はやぶさ」が廃止されると定期運用を失った。ちなみに、 九州行き寝台特急の牽引期間は24年間で担当した機関車のうちで最長である。 2009年4月には10両が下関に配置されていたが、2010年4月の時点で配置数は2両となっている。 寝台列車牽引という役割を終えた以上、残る2両を取り巻く環境にも厳しいものがあり、今後いつ 全廃されるかわからない状況である。 写真−5 富士・はやぶさを牽引するEF66型 3.今後の展望 JR西日本所属機は、前述のようにいつ廃車されてもおかしくない状況である。また、JR貨物所属機も 0番台は新しいものでも製造から35年、100番台でも製造から20年近く経っており、こちらもEF210型の 増備により近いうちに急激に数が減少していくことが予想される。 最後に、EF66型機関車の今後の1日も長い活躍を祈りこの項の結びとしたい。 参考文献 ・週刊鉄道データファイル第34号、P34-1〜34-6、EF66型電気機関車、 デアゴスティーニジャパン、2004年 ・鉄道ファン2010年7月号、付録「JR車両のデータバンク」、交友社 ・鉄道ファン2009年3月号、P52〜P60「EF66ブルトレ伝説」、交友社 ・JR貨物時刻表2010、P272、P273、社団法人 鉄道貨物協会
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