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社会交通工学科2年 2011番 五十嵐 太一 |
1.はじめに 私はいま、小竹向原駅の近くに住んでいるので、この機会に西武有楽町線を取り上げてみようと考えた。 2. 西武有楽町線について 2-1. 概要 西武有楽町線は、東京都練馬区にある練馬駅を起点として小竹向原駅との間を結ぶ西武鉄道が運営・管理する路線である。閉塞方式は、相互直通運転をしている東京メトロ有楽町線の閉塞方式と合わせるために、西武鉄道の路線では唯一車内信号式自動列車制御装置(CS – ATC)を使用している。営業キロは2.6kmで総駅数は3駅と比較的短い路線なので、上動産やイベントの広告では東京メトロ有楽町線の一部として紹介されることが間々ある。 図1 西武有楽町線路線概略図 2-2. 開業までの経緯 西武有楽町線が建設された経緯として、昭和43年に発表された「都市交通審議会答申第10号《までさかのぼることができる。この都市交通審議会というのは、都市交通に関する基本的な計画について調査・審議するために運輸省に設置された委員会である。その委員会が、当時逼迫する首都圏の鉄道輸送に、また首都のこれからの発展に対応した地下高速鉄道網の計画路線を策定した。その計画路線の1つに『成増及び練馬の各方面より向原及び池袋の各方面を経由し、また、中村橋方面より目白方面を経由し、護国寺、飯田橋、市ヶ谷、永田町、有楽町及び銀座の各方面を経て明石町方面に至る路線』と計画された8号線が設定された。これが元となり現在の東京メトロ有楽町線のルートとして建設されていった。また、このなかの目白~護国寺間はのちに現在の都営地下鉄大江戸線のルートの計画案に組み込まれている。 この「答申第10号《において審議会は8号線と西武池袋線を練馬駅において相互直通運転を行うことが方向づけられている。この方針を受けて、営団と西武鉄道は「営団8号線、西武線相互乗り入れ協議会《を設置し、2回の協議会を開いた後、「8号線と西武池袋線との列車相互直通運転に関する覚書《を交換した。その同意書には、
こうして西武鉄道により練馬~小竹向原間の工事が進められたが、用地獲得や沿線住民の説得などで工事が予定よりも大幅に遅れてしまった。そのため営団有楽町線の小竹向原駅開業に間に合うように、小竹向原駅と新桜台駅間を昭和58年10月1日に部分開業し、有楽町線との直通運転を開始した。西武有楽町線は営団有楽町線の支線のような存在で開業したのである。また起点が練馬駅に設定されているため起点のない終点のみでの開業となった。開業当時、西武有楽町線と西武池袋線が接続されていなかったので、暫定的取り扱いとして営団7000系10両1編成を西武鉄道に賃貸し、その車両で直通運転を実施した。後の平成6年12月6日に新桜台駅~練馬駅間が開通し、全線開業に至っている。 3.沿線風景 西武有楽町線は、小竹向原駅~新桜台駅間が地下区間で、新桜台駅と練馬駅の間で地上に上がり、練馬駅は高架駅となっている。 3-1. 小竹向原駅 西武有楽町線の終点駅であり、東京メトロ有楽町線・副都心線との接続駅かつ乗り入れ駅である。駅の構造としては、2面4線構造でこのうち西武有楽町線は中側の2・3番線を発着している。駅自体は東京メトロが管理・運営しているが、運転・車掌業務はこの駅で東京メトロと西武鉄道の乗務員が交代する。駅周辺は閑静な住宅街が広がっている。東京メトロ有楽町線の池袋~成増間を建設すると同時に地上に道路を敷設することとなったが、小竹向原駅付近の計画ルート上に小学校が存在していたことから周辺住民の反対運動がおこった。この問題は道路を地下に通すことで解決したが、このことが有楽町線の開業を遅らせる原因となり、ひいては西武有楽町線の開業を遅らせる一因ともなった。道路が地下を通っているため、この駅の出口付近には遊歩道が設置されている。 小竹向原駅を出ると西武有楽町線の線路は上り坂になり、北西方向から南西方向へと弧を描きながら進路を変える。そのカーブが終わると新桜台駅に到着する。 3-2. 新桜台駅 西武有楽町線唯一の中間駅である。環状7号線沿いに存在しており、出口付近の交通量は非常に多い。近くに西武池袋線桜台駅、江古田駅があること、この駅からターミナル駅である池袋駅に行くと近くの西武鉄道の駅に比べて運賃が割高になることなどから、この駅の利用者はきわめて少ない。営団有楽町線の支線扱いとして開業したためか、この駅に備え付けられているサインシステムや設備のデザインが営団地下鉄時代のそれと似通っている。西武鉄道が管理・運営する唯一の地下駅でもある。 新桜台駅を出ると今度は西へ少しカーブする。それが終わるとまた上り坂となりトンネルの出入り口が見えてくる。その出入口は西武池袋線の高架の真下にあり、そのまま上っていくと練馬駅に到着する。 3-3. 練馬駅 西武有楽町線の起点駅であり、西武池袋線との接続駅である。都営地下鉄大江戸線との乗換駅であることや練馬区役所が近くにあることなどから、練馬区内屈指の利用者数を誇る。駅構内の配線は2面6線で外側に通過線が設置されている。しかし、練馬駅は10両編成の折り返しができない配線となっているため、当駅を通る西武有楽町線の車両はすべて西武池袋線に直通して運行されている。 4. 4. 運行車両・運行本数 4-1. 運行車両 西武有楽町線を走る運行車両は、西武6000系・東京メトロ7000系・東京メトロ10000系・東急5000系・東急5050系4000番台・東急5050系・横浜高速Y500系の7種類である。このうち、東京メトロ7000系は開業当初から、西武6000系は平成2年から、東京メトロ10000系は平成19年から、東急5000系・東急5050系4000番台・東急5050系・横浜高速Y500系は平成24年から営業運転を開始している。 写真1 東急 5153F 編成 4.2 運行本数 西武有楽町線開業当時の運行計画は、部分開業であったことや、西武の使用車両が営団から借りていた7000系10両1編成だけであったことから、1時間当たりの運行本数を朝ラッシュ時5本、日中4本、夕ラッシュ時5本として、1日の運転回数を平日68往復、休日63往復としている。一方、平成25年3月16日時点のダイヤ改正では1時間当たりの運行本数上下合わせて朝ラッシュ時最大24本、日中16本、夕ラッシュ時16本、となっており、休日でも1時間当たり終日平均16本と約30年の時を経て運行本数が大きく増加している。 5. まとめ 西武有楽町線は、営業キロ2.6kmという短い路線ながらもその存在は異彩を放っている。それは、地下鉄との相互直通運転を実現するためだけに建設された路線だということである。 東京の地下鉄路線に目を向ければ、相互直通運転をしている路線がほとんどであり、乗り入れ先の私鉄にもともとあった駅へ地下鉄路線を建設し、乗り入れ先の私鉄の利用客にも利用させるために相互直通運転を果たしている。しかし、この西武有楽町線だけは、もともと私鉄どころか鉄道が通っていなかったところに地下鉄を通すということで付近を走っていた私鉄から短絡線ともいえる路線を建設し相互直通運転を果たしている。 似たような路線として京王新線と京成押上線があげられるが、京王新線は乗り入れ先の私鉄である京王線の新宿駅という、もともとあった駅へ都営新宿線が建設されたことから、短絡線よりも輸送力の増強を図る、複々線としての役割を期待してつくられたと考えられる。京成押上線にしても、支線のような存在であった京成押上線を都営浅草線と乗り入れさせたという点では類似しているが、押上線は地下鉄が建設される前からある路線であり、当初は押上線が本線として活躍していたという点からみると、都営浅草線は京成線のターミナル駅であった押上駅に建設された地下鉄路線、つまり京成本線や押上線の利用客にも利用してもらうためにも建設された路線であることが推測できる。 西武有楽町線も都市交通審議会で計画された8号線の一部として考えれば、他の相互直通運転をしている地下鉄路線と大差はないといえるが、西武有楽町線は練馬駅という、もともとあった私鉄の駅へ西武鉄道が路線を建設して東京メトロ有楽町線との乗り入れを果たしている。なぜ当時の営団は練馬駅への地下鉄建設をしなかったのだろうか。それには営団の思惑があったと考えられる。都市交通審議会で計画された8号線は、都市審議会答申15号においてその計画路線から成増~向原間が削除された。その代わりに削除された成増~向原間に志木~成増間及び向原~新宿間を付け加えて、志木~新宿間を13号線として新たに付け加えた。現在の副都心線である。13号線の成増~向原間は8号線として工事が行われていた。また、和光市と成増の間に新たに鉄道を敷設することによって、東武東上線との相互直通運転も視野に入れていたのである。 ここからはあくまでも私の推論に過ぎないが、営団側は西武池袋線よりも大回りで建設され競争力が劣る池袋~練馬間よりも、東武東上線と競争力で拮抗している成増~池袋間を8号線の主要路線として計画したのではないだろうか。そして練馬~池袋間はあくまでも支線的な扱いで、建設に対しては消極的であったのではないのだろうか。そのような状況を見るに見かねた西武鉄道が主体となって西武有楽町線を建設し始めたと仮定すれば、この営団の練馬駅への地下鉄建設をしなかった理由がよく理解できるのである。実際、平成25年現在の池袋~成増間の平日の1時間当たりの運行本数を見ると、朝ラッシュ時で40本と西武有楽町線の約1.5倊以上の運行本数が走っている。開業から30年経った平成25年現在では、和光市~池袋間が主要路線として、また、西武有楽町線はあくまで西武池袋線との連絡線として位置づけられているといっても過言ではない。この関係は、当初の都市交通審議会が出した計画と乖離している。 私は、西武有楽町線の1時間当たりの運行本数が和光市~池袋間と同じ本数になることを願っている。現在の和光市~池袋間では日中でも2分間隔となっているときがあり、全く需要と見合っていないと感じることがある。西武有楽町線の運行本数が増えれば、西武池袋線石神井公園駅~練馬駅間の複々線を現状より効率よく使用できると思うし、それによって朝のラッシュ時の混雑が緩和され、地下高速鉄道網の計画目的にあった副都心の発展等の都市構造の変化に今よりも柔軟に対応することができると考える。 写真2 西武有楽町線の終点駅 小竹向原駅2番出口 参考文献
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