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〜 ドア上の案内装置と路線図にまつわる小話 〜
‐利用者の立場から考える‐


社会交通工学科3年 8046番 金元 良平

1. はじめに

 東京や大阪では、1990年代からLEDを用いた車内案内装置を装備した車両が多く製造されている。 このLED式案内装置は、乗客に次の停車駅や乗換案内といった情報を提供するもので、 最近では、より多くの情報を表示できるLCD(液晶ディスプレイ)式案内装置を装備した車両も登場している。 これらの車内案内装置は、ドアの上部に設置される事が多いが、このドア上部のスペースには、同時に路線図も掲示されることもある。
 今回は、私が普段利用する都営地下鉄浅草線に乗り入れる車両を例に、車内案内装置と路線図に関する話題をしていこうと思う。



2. 車内案内装置と路線図の位置関係

 まず、車内案内装置と路線図が同じドア上に設けられている場合では、ドアの鴨居部分に案内装置、 さらにその上に路線図が掲示される。(写真1)




写真1 京急2100形のドア上部


 案内装置のサイズが大きいと、このように路線図を併設することはできない。 京急の車両の場合、写真1の2100形の他、新1000形・1500形・600形がLED式案内装置を備えているが、どの車両も設置されている機器は、 ほぼ同じである(2100形のみドアチャイム用のスピーカーが無い)。

 案内装置のサイズが大型になると、路線図を掲示するスペースが無くなるため、 ドアごとに、案内装置または路線図のどちらかが設置される。 その際には、案内装置と路線図が交互に置かれる形となる。(写真2)(写真3)






写真2・3 京成3000形のドア上部


 京成線の車両では、この交互配置が採用されている。案内装置の表示部分そのものはサイズが小さいが、 ドア開閉装置のカバーと一体化しているため、路線図を掲示するスペースが無く、 結果として、案内装置と路線図を取り付けるドアが別々となっている。 この配置の仕方は、京成グループに属する北総線の車両でも見られる(写真4・5)






写真4・5 北総9100形のドア上部


 この交互配置は都営5300形でも採用されている(写真6・7)






写真6・7都営5300形のドア上部


 都営5300形の場合、デビュー当初は、列車の走行位置を表示するマップ式の案内装置が使用されていたが、 のちに、京急線羽田空港駅・北総線印旛日本医大駅の新規開業により、マップ式の案内装置では表示しきれなくなり、使用を停止。 現在は、写真6の様に普通の路線図が掲示されている。
 このように、浅草線では、会社や車両によって案内装置や路線図の配置の仕方は異なっているのだが、 概ねドアの上を見れば、乗換駅や次の停車駅を知ることができる。(但し、LED案内装置が設置されていない車両もある)



3. LCD式車内案内装置の登場が路線図の掲示位置に与えた影響

 LCD(液晶ディスプレイ)による車内案内装置は、JR山手線に投入された新型車両を皮切りに、首都圏の各路線で普及し始めてきた。 浅草線に乗り入れる車両では、京成3050形全車と京急新1000形・600形の一部の車両が装備している。 このLCD案内装置は、従来のLED式案内装置では出来なかった画像の表示も行えるため、情報提供量が格段に増えた。
 LCD案内装置は、LED式のものより設置に必要なスペースが大きくなるため、 全てのドア上に案内装置を取り付けている京急の車両では、路線図を掲示するスペースが、ドアの上部には無くなってしまった。 (写真8・9)






写真8・9 京急新1000形に搭載されたLCD式車内案内装置


では路線図はどこに行ってしまったか、それは…

ドア上部のさらに上、天井である。(写真10)






写真10・11 LCD式案内装置と天井に掲示された路線図


 従来のLED式案内装置との併設の場合は、少し顔を上げれば路線図を見ることが出来たが、 天井部に掲示された路線図では、顔を真上に上げないとよく見えない。(写真11)
 LCD案内装置でも路線図の表示がされるが、数秒経つと他の情報に切り替わるため、下車駅や乗換駅を探す際には不便である。 また、路線図そのものが、各車両の進行方向に対して左右1箇所ずつにしか掲示されていないという事実も、付け加えておく。

 普段からこの路線を利用する人、つまりは定期利用者ならば、路線図を見る事は少ないだろうが、 都営浅草線は京急線・京成線・北総線と相互乗入れを行っているために、様々な行き先があり、 地下鉄線内に通過駅があるエアポート快特の運行、京成本線経由と成田スカイアクセス線経由という、異なるルートによる 成田空港への直通列車の運行など、ダイヤも複雑である。
 また、路線名の通り途中駅には多くの観光客が訪れる浅草があり、 空港利用者・観光客など、浅草線を初めて利用する乗客も多く、誤乗車・誤下車の可能性を無視出来ない。

 そのような定期外利用者の為には、車内案内装置や路線図がどこにあるかすぐに分かるようにするべきではないだろうか? 私は定期利用者なので、路線図を見る事は殆ど無いが、ふと車両の天井部に路線図が掲示されているのを見て、 「路線図がこんなところにあったら見辛いだろう」と感じた。 実際、天井の路線図を見るには、路線図の真下まで来て、顔を真上に向けなければならないのだから。



4. まとめ

 今回の記事を書くきっかけは、都営浅草線が様々な車両が乗入れ、 形式ごとにLED式・LCD式案内装置の形状や、配置の仕方が異なっている所が、趣味的で面白いと感じたからである。 その中で、路線図との位置関係が利用者の立場として気になった為、最終的にはこのような内容となった。 趣味的な視点だけでなく、別の視点から鉄道を見る事で、新たな発見が出来たのは大変嬉しい事であった。



 
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