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〜 JR東日本E233系について 〜

社会交通工学科3年 8101番 長沼 諒太

1) E233系概要

 JR東日本の通勤・近郊形電車の今後の標準車両として、E231系の技術を踏襲しつつ、 主要機器を二重系化するなどして信頼性を高めた最新型の通勤形電車である。
 ユニバーサルデザインの深度化を図り、つかまり易さなどに配慮した握り棒の形状、優先席エリアの明確化などを実施している。 また、利用者のニーズを反映し、空気清浄機の設置、座席の座り心地の改善、 結露しにくいドアガラスの採用など快適性の向上も図っている。
 中央快速線や京浜東北線などの車内はオールロングシートで、 山手線のE231系から採用している液晶ディスプレイを各ドア上に設けてさらにその画質を向上させているほか、 京浜東北線では画面サイズを今までの15インチから17インチに拡大している。
 東海道線用の車内は一部セミクロスシートで、 各ドア上には運行情報なども表示できる停車駅案内装置を設けている。また、 E231系近郊形と同様に車椅子対応トイレを設置しているほか、10両の基本編成には2階建てグリーン車を2両連結している。
 車外の行先表示器にはフルカラーLEDを採用し、さまざまな列車種別をわかりやすく表示しているほか、 車外スピーカーを備えて車掌からホーム上の利用者に対して放送による案内ができるようにしている。



2)特徴

○ 電気機器や保安装置など主要機器を二重系化し、一つが故障しても通常走行を可能として、 信頼性を向上させ輸送障害を低減する。

○ 優先席や女性専用車(朝時間帯)の荷棚、吊手高を女性の身長を配慮して50mm低くし、 優先席エリアの明確化等のユニバーサルデザインの採用や空気清浄器の設置、 腰掛幅を430mmから460mmに拡大等、人に優しい車両としている。

○ 床面高さを低くしてホームとの段差を80mmから30mmに縮小し、バリアフリー化の推進を行っている。

○ 山手線で採用している情報案内表示器を各ドア上に設置し、運行情報やニュース等を表示するほか、 列車種別や行先が多岐にわたることからわかりやすいフルカラーの行先表示器を採用している。

○ 車両の加減速性能向上による到達時分短縮や、拡幅車体の採用による混雑緩和を図っている。

○ 車体の強度を向上。なお、取替えにあたっては、中央快速線をご利用されるお客さま等へのはがきアンケート20,000名、 インターネット調査は1,000名、グループインタビューは93名に実施した結果をデザインや車内設備等に反映している。




3) 中央線・青梅線・五日市線用 0番台

 中央線快速・青梅線・五日市線向けの車両で、豊田車両センターに配置されている。

 中央線快速の場合、列車種別が多数(各駅停車、快速、通勤快速、中央特快、青梅特快、通勤特快、ホリデー快速)ある。 他の路線に比べて多く、車内案内表示器右側の液晶画面に表示される停車駅案内は、立川以西における最遠直通先である大月駅(中央東線)、 奥多摩駅(青梅線)、武蔵五日市駅(五日市線)、高麗川駅(八高線)、 そして河口湖駅(富士急行線)まで中央線快速の路線色であるオレンジ色のラインで描かれている。
 情報案内表示器では2画面(河辺以西発着または富士急行線に乗り入れる際には3画面)に分けて表示している。

 客用ドアは、青梅線の青梅駅 - 奥多摩駅間・五日市線・八高線・中央本線の高尾駅以西の冬季の室内保温を目的として、 半自動扱いが採用されたほか、各車両のドア1か所を除いて閉め切ることが可能な「3/4閉」スイッチも設置されている。 なお、半自動ドア扱いで運転される場合は、ドアスイッチの縁のランプが点灯している時にドアを開閉することができるほか、 液晶画面にその旨も表示される。
 半自動ドア扱いは八高線に乗り入れ当初から、 中央本線相模湖駅 - 大月駅間と富士急行線は2008年1月4日より、青梅線青梅駅 - 奥多摩駅間(青梅駅は立川方面行きを除く) と五日市線では2008年3月15日より実施されている。

 青梅線・五日市線・八高線・富士急行線での分割・併合の関係で、 201系と同一の10両固定編成(T編成・T1 - )と分割可能な6+4両編成(H編成・H43 - )の2種類の10両編成で製造されている。
 6+4両編成の場合、中央線快速運用の201系では東京方に4両編成を連結していたが、本系列では高尾方に4両編成を連結する。 高頻度運転を行う中央線快速の性格から、MT比はE231系の基本構成となっている4M6Tから6M4Tとして加減速性能を向上させ、 従来の201系より数分程所要時間を短縮させる予定である。




写真1 E233系0番台




写真2 E233系1000番台(I氏の提供)



4) 京浜東北線・根岸線用 1000番台

 京浜東北線・根岸線向けの車両で、番台区分は1000番台となり、浦和電車区に配置されている。 2007年度中に120両、2008年度中に370両が投入された。MT比6M4Tの10両固定編成のみが製造され、 2007年(平成19年)12月22日から営業運転を開始した。870億円を投じて83編成、 830両の車両を2010年1月までにこの1000番台に順次入れ替えられた。0番台の機能に加え、 新製時より209系と同様の超音波ホーム検知装置を先頭車前端両側に装備し、 保安装置をデジタルATCに変更したほか、6号車の床下に非常用の梯子を新設するなど、 安全性の向上が図られている。
 また、京浜東北線と根岸線ではドアの半自動扱いを行っていないことから、 ドアスイッチを含めた半自動機能は搭載されていない。

 外観では、前面帯が前面窓下に配され、列車番号表示器が前面窓の右下隅(向かって左)に設置されている点が0番台とは異なる。
 客室内では、各ドアの上部に設置されている液晶ディスプレイが、0番台やE231系500番台などの4:3比率の15インチから、 16:9の17インチワイド画面へ変更された。座席モケットは路線カラーである青色をベースとした明るい色調であるほか、 座面も0番台に比べて改良されている。
 また、編成両端先頭車は、すべての荷棚とつり革の高さを優先席と同じタイプの50mm低くした仕様 とした。209系0番台では6号車に連結されていた6ドア車は当初連結する予定だったが、 京浜東北線のピーク時の混雑率が年々緩和されていること、 拡幅車体による定員増加、常時着席のニーズなどの面から本系列では連結しない。

 側面・前面の種別・行先表示器では、209系500番台と同様に路線名と行先を交互に表示するが、 路線名は「京浜東北・根岸線」と表示される。種別の背景色は各駅停車がスカイブルー、 快速はピンクである。また、0番台では西行の中野以西(土休日は吉祥寺以西)で快速の種別の表示を行わないが、 当番台では北行の田端以北、南行の浜松町以南でも各駅停車の表示を行う。

 2010年4月19日より、 京浜東北線・根岸線には女性専用車両が導入されたが、設定対象車両は吊り革・荷棚が50mm低い特別設計となっている先頭車ではなく、 3号車のモハE233形1200番台である。




写真3 E233系 2000番台




写真4 E233系 3000番台



5) 常磐緩行線・東京メトロ千代田線用 2000番台

 常磐緩行線と乗り入れ先の東京地下鉄(東京メトロ)千代田線向けの車両で、番台区分は2000番台となり、 松戸車両センターに配置されている。2009年度に1本が導入され、207系900番台を置き換えた。その後、 2010年度に残りの17本を製造して203系を置き換える予定である。なお、209系1000番台は置き換え対象に入っていない。

 本番台区分では車両限界の狭い千代田線との直通運転用のため、 1999年に同様の仕様で新製された209系1000番台に準じた裾絞りのないストレート車体を採用している。 さらに客用ドアの間隔は他番台の4,940mmではなく、私鉄車両での採用が多い4,820mm(先頭車乗務員室直後は4,780mm)としている。 側面においては側窓上部のラインカラーは省略されている。他番台とは異なり、先頭車に非常用扉を設置し、 非常用梯子(補助腰掛と一体形)を設置する。また、前照灯は窓上のHID式ではなく、シールドビーム灯とし、窓下に配置している。 列車番号表示器については非常用扉部に設置している。

 車内内装については0番台・1000番台に準拠したものであり、座席表地は青色としている。 車椅子スペースについては千代田線車両に合わせて2号車と9号車(先頭車の隣の中間車)へ設置している。 また、扉上部に設置される液晶ディスプレイは0番台や1000番台とは違い2基ではなく1基のみの設置となっている。

 運用範囲は取手駅 - 綾瀬駅 - 代々木上原駅間の常磐緩行線・千代田線内のみで、 小田急電鉄への乗り入れの可否については公表されていない。
 2000番台で運用される列車はすべて各駅停車で運行されているが、常磐快速線の列車とは異なり、「各駅停車」の種別表示を行う。

 最初に落成した編成は2009年5月19日に東急車輛製造横浜製作所から出場した。 第2編成は2010年8月5日に東急車輛製造横浜製作所から出場した。



6) 東海道線用 3000番台

 JR東日本では、2007年度から鎌倉車両センター配置で横須賀線・総武快速線で運用されている E217系のVVVFインバータ装置などの機器類更新工事を開始した。工事施工に際して、 鎌倉車両センターに配置されている予備編成が不足することから、 2006年に東海道本線・伊東線で運用されていた113系を置き換えるために国府津車両センターに転属した E217系基本10両+付属5両編成1本を再度鎌倉車両センターに配置することとなったが、 その分として製造されたのが本系列の近郊タイプとなる3000番台である。

 2007年11月に東急車輛製造で基本10両+付属5両1本が落成し国府津車両センターに配属された。 車体の帯色はE231系近郊タイプと同一の「湘南色」であり、編成形態もE231系近郊タイプに準じたもので、 基本編成となる10両編成と付属編成となる5両編成で構成される。基本編成の4・5号車には2階建てグリーン車が連結されている。

 客室設備については基本的に通勤形に準じた仕様である。
 普通車の座席はロングシートが基本であるが、 基本編成両端の2両(1・2・9・10号車)と付属編成の東京方2両(14・15号車)はセミクロスシートを配置している。 車椅子スペースは各先頭車に配置しているほか、 ロングシートの先頭車(11号車)においてはすべての荷棚とつり革を50mm下げた優先席と同仕様のものとした。
 トイレ設備は10両編成の両端先頭車(1・10号車)と付属編成の熱海方先頭車(11号車)の連結面側に 電動車椅子対応の大型トイレ(真空吸引式洋式)を設置した。出入口の開口幅はE231系より広い850mmだが、 E531系のような変則的なドア配置にはしていない。車内案内表示器は通勤形と異なり、 LEDによる2段式の文字スクロール表示式をドア上部に設置している。



7) 京葉線用 5000番台

 京葉線(京葉線車両が乗り入れる外房線・内房線の一部区間、東金線の全区間を含む)向けの車両で、番台区分は5000番台となり、 京葉車両センターに配置されている。これにより、京葉線で運用されている201系、205系、209系500番台を置き換える予定である。 編成の内訳は10両固定編成21本(210両)、6両+4両分割編成4本(40両)であり、E331系は置き換え対象に入っていない。

 基本的にはそれまでの車両を基本としているが、京葉線のラインカラーであるワインレッドの帯を配置している。 同線で運用している201・205系に合わせて東京方先頭車を1号車とし、蘇我方先頭車を10号車としている。また、 同線の201系の置き換えも行うことから10両固定編成のほかに6両+4両分割編成も投入する予定である。なお、 6両+4両分割編成においては東京方の6両編成は1〜6号車、4両編成は7〜10号車として、 6・7号車間の先頭車には電気連結器を装備する。

 客室内装は1000番台や2000番台に準拠したものであり、座席表地は青系色を採用した。 車椅子スペースは10両固定編成の両先頭車と分割編成の10両組成時の両端先頭車に設置する(6・7号車先頭車は非設置)。 また、編成中の両端1号車と10号車ではすべての荷棚とつり革高さを優先席と同様の高さとしている。
 この5000番台においても車内案内表示には17インチワイド液晶モニタによる案内表示を行うが、 新たにモバイルWiMAX(高速無線通信)を採用し、映像広告・ニュース・天気予報などの放送を配信可能としている。

 制御装置、補助電源装置・台車などの走行機器類は0番台とほぼ同様であり、起動加速度は2.5 km/h/sに設定されている。 1000番台と同じく10両固定編成のサハE233-5500番台には床下に非常用ハシゴを装備する。




写真5 E233系 5000番台


表1 E233系基本性能

番 台 0 1000 2000 3000 5000
起動加速度km/h/s 3.0 2.5 3.3 2.3 2.5
営業最高速度km/h 100 100 90 120 110
減速度km/h/s 5.0 5.0 4.7 4.2 5.0
MT比 6M4T 6M4T 6M4T 8M7T 6M4T



8) 参考文献

 『鉄道ダイヤ情報』2009年11月号P71
 『鉄道ジャーナル』2006年3月号 P43、2009年11月号 P35、2008年2月号 P105
 「鉄道ファン」2009年11月号
 JR東日本 http://www.jreast.co.jp/press/2005_2/20051001.pdf
        http://www.jreast.co.jp/press/2006_1/20060901.pdf
        http://www.jreast.co.jp/press/2006_2/20070303.pdf




 
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